ロンドン国際芸術高校(International School of Creative Arts/ISCA 以下、イスカ)は、多くの有名デザイナーを輩出したセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)を含むロンドン芸術大学(University of the Arts London)の付属校として2009年に設立された。設立時の名誉校長はシューズデザイナーのジミー・チュウ(Jimmy Choo)。他大学への進学を強化するため、14年に付属校から独立校となった。イギリス唯一のアート&デザイン・クリエイティブ専科の全寮制高校で、同校によると、過去9年、イスカでロンドン芸術大学進学を希望した学生は100%進学しており、この2年は同校卒業生の100%がロンドン芸術大学のほか、アメリカのパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design)、イタリアのマランゴーニ学院(Istituto Marangoni)など世界の名門芸術大学に進学しており、2019年度の「英国の優れた功績機関(BEST PRACTICE REPRESENTATIVE)」に選出された。現在の学生数は2学年約80人で、18カ国の学生が学び、中華系とロシアからの留学生が半数を占め、09年から19年までには25人の日本人が学んだ。卒業すれば、日英両国で高等学校卒業に相当する資格が取得できる。イスカの年間授業料は2万9460ポンド(約400万円)、学寮費は1万1995ポンド(約160万円)。先ごろ、コリン・ケリガン(Colin Kerrigan)=イスカ エグゼクティブ・ディレクターが来日し、同校の日本事務所である芙蓉エデュケーションズで学校説明会を開いた。世界の有力なファッションや芸術大学への高い進学率を誇るイスカ独自のファッション教育とは?
WWD:イスカの教育の特徴は?
コリン・ケリガン=イスカ エグゼクティブ・ディレクター(以下、ケリガン):まずチャレンジする人材を養成するカリキュラムであること。既成概念や先入観を捨て、“あなたにとってファッションとは何か”を自分に問いかけ、さまざまなアプローチから多面的な考え方を生み出すことを重視している。流行に迎合して売れ筋商品を作るのではなく、自分たちが自由な発想からファッションを作り、業界を変えていく力を持った人材育成がイスカの使命だ。100人いたら100種類のクリエイションが生まれる。
WWD:特徴的な授業の一例は?
ケリガン:素材に焦点を当ててチャレンジするプログラム。ガラス、ティッシュペーパー、マッチ、針金のかたまりなど、通常は衣服に使用しない素材を用いて作品制作にトライしている。この素材が本当に服になるのかと学生たちは半信半疑で制作を始めるが、つなげたり、焼いたり、素材と向き合いながら、いろいろな面白いアイデアと柔軟な手法によって、これまでにない作品ができあがる。これらの作品をファッションショーで発表したとき、観客から大きな拍手を浴びた。それが学生たちの自信となり、次の挑戦につながっていく。私も学生時代、恩師である彫刻家アンソニー・カロ(Anthony Caro)から“常識やルールを無視し、破壊しろ”とよく言われたものだ。また、セント・マーチン美術大学と提携して、2年生が週に1度授業を受けているのも特徴だ。
WWD:日本人の在校生をどう評価している?
ケリガン:かつて日本人学生は、おとなしい、シャイだといわれたが今は違う。ファンタジーのある服を作る、イマジネーションが旺盛な学生が多い。アニメやコスプレなどユニークな文化を持つ環境の中で育ってきたことが影響しているのかもしれない。また日本人には、異文化も受け入れる柔軟さがある。
WWD:イスカに入学する学生に求めることは?
ケリガン:“もう知っている”“すでに分かっている”という先入観を持たず、真っさらな気持ちと熱意で学ぶ姿勢を保つこと。そして、広い視野を持ち、日常生活でふだん目にする何気ないことを、好奇心や問題意識を持って見てほしい。チャレンジすべきファッションの題材はいたるところにある。ロンドンはさまざまな人種が集まる多様性のあるダイナミックな街であり、新しいものが生まれる土壌がある。ファッションを学ぶには最適な環境だ。イスカには中国をはじめとしてタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシアなどアジアの学生が増えており、日本からの学生ももっと受け入れたい。