ファッション

「エル」の原点に立ち返って“おしゃれな友達”のような雑誌を 塚本香/「エル・ジャポン」編集長

 「エル・ジャポン」は、今年創刊25周年を迎え、本誌とウェブ、リアルイベントなど、立体的に周年を盛り上げるイベントを企画している。ファッションを軸に、カルチャーやセレブまで、インターナショナルなコンテンツに強い同誌だが、ここ最近では社会性のある問題も巻頭から積極的に紹介。広い視点で女性をサポートしていることも注目される。各国版「エル」の進んだ事例をもとに、雑誌とデジタルの関係性を探る同誌が目指す理想を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):今年創刊25周年だが、年間で考えている企画は?

塚本香・編集長(以下、塚本):年間を通じて、さまざまな角度から25周年のムードを浸透させていきます。まずは6月4日に特設サイトをオープンし、周年を機に「エル」の世界観をあらためて伝えるコンテンツを発信していきます。6月14日には、働く女性をサポートする読者イベント「ウーマン・イン・ソサエティ」を六本木のアカデミーヒルズで開催します。6月号で特集した“エルの考える新ワーキングスタイル”とも連動し、国内外からゲストを招待して女性と仕事との関係についてスピーチやパネルディスカッションをしてもらいます。来場者が参加できるワークショップも企画しています。女性と社会とのよりよい関係をバックアップすることも「エル」のミッションの一つ。ワーキングが今回のテーマですが、ファッション誌ならではの、おしゃれで楽しい内容にしたいです。もともと本国フランスの「エル」でスタートしたイベントですが、今ではアメリカ、イギリス、スペインなど各国で形を変えて定期開催しています。日本では初の取り組みですが、今後も継続していきたいと思っています。さらに10月には周年の目玉となるリアルイベントを開催する予定です。

WWD:本誌で予定している周年企画は?

塚本:10月号では、「エル」のルーツであるパリを特集します。11月号は、インターナショナル誌ならではのネットワークを駆使して、いつもとは違うセレブリティ特集を予定しています。ファッションページでは、「エル」が創刊から提案している、ベーシックワードローブにフォーカス。過去のアーカイブを使いながら、2014年版スタンダードスタイルを紹介します。この2号は25周年記念の特大号として力を入れて、10月のイベントにつなげていきます。広告もたくさん入るといいですね(笑)。

WWD:編集長就任2年だが、理想に近づいている?

塚本:少しずつ近づいていると感じます。でもアーカイブを見ていると、“おしゃれな友達”のような雑誌で、読者をリードしつつも上目線ではないという、「エル」のカラーを表現しきれていなかった気もします。ファッションを軸に、強みである映画やセレブリティのコンテンツもパワーアップしつつ、読者とつかず離れずの距離感をさらに探っていきたいです。

WWD:ここ最近、反響があった企画は?

塚本:“春のトレンド大研究”“「エル」を彩ったおしゃれアイコン”“トップモデル大革命”が読者アンケートで人気が高いというのは予想通りでしたが、想定外だったのは“プリンセスパン症候群”の企画。かつて流行った“ピーターパン症候群”の現代版です。自立しているけれど、独身で子どももいない、でも前向きで夢がある30~40代の女性を指しています。誌面では“ プリパン・セレブ”を分析したり、編集部内のプリパンを集めての覆面座談会もやりました。

WWD:新たに挑戦した企画は?

塚本:6月号で特集した「32人のワーキング事情」です。結婚や育児、社会貢献など女性に関わるさまざまなテーマはこれまでも取り上げていましたが、第1特集で大々的に展開するのは初めて。今の女性が何を感じ、どう行動しているかを取り上げるのは重要なこと。巻頭でワーキングを特集したのは、挑戦でもありました。ファッションだけでなく、女性を取り巻く問題を堅苦しくないメッセージに代えて、積極的に伝えていきたいです。

WWD:ブランドからのリクエストに変化はあるか?

塚本:誌面だけでなく、もっと立体的、多角的な展開を期待されていると感じます。本誌だけでなく、「エル・オンライン」と連動して、さまざまなアプローチができるのが「エル・ジャポン」の強み。そういった要求が増えています。周年と関連してのトライアルとしては、5月号では通常号とは別に、「グッチ」と組んでフローラBOX入りの限定版を作り、書店でも大きく展開しました。おかげさまで数日で完売という嬉しい結果でした。ジュエリーブランドとは、本誌と弊社のブライダル誌「エル・マリアージュ」との共同企画が増えています。感度の高い女性にファッション性をアピールしつつ、ブライダル需要でも確実にリーチしたい。「エル」の冠をつけた世界観が同じ2誌で、切り口を変えつつもひとつのブランド像をきちんと紹介することができるというのがポイントではないでしょうか。こういった複合的な展開が今後ますます必要とされてくると思います。ファッションブランドでも、ライフスタイル化が進み、インテリアや生活雑貨などの取り扱いも増えています。今後は「エル・デコ」でも同じような連動企画に取り組んでいきたいです。

WWD:25周年の後に、さらに温めているものは?

塚本:リアルなファッション特集をもっともっと楽しく!というのが目標です。読者に人気の“着まわし30days”やセレブの着こなしをお手本にした“セレブ先生のコーディネート白熱教室”なども昨年スタートしましたが、トレンド図鑑やコレクション速報などファッション誌に欠かせない特集とは別に、デイリーなおしゃれを楽しむ、これぞエル・スタイルといえる企画に力を入れていきたいです。憧れの要素はマストですが、読者に手が届かないと思われないようにすることが重要。私自身も含めて、エル・スタイルをしっかりと作っていきたいです。

WWD:今後の方針は?

塚本:目標は、紙とオンラインとの連動です。イギリス版では、本誌で記事にした内容について、ウェブ上で意見を募ったりしています。これが新たな雑誌とウェブの関係性なのではと感じます。日本では今年2月、オフィシャルのインスタグラムを雑誌とウェブの編集部が共同でスタートしました。個人的にはここ数年で、紙の良さが改めて認識されて、紙がウェブに代わることはないと実感しています。答えがないので手さぐりですが、さらに紙とウェブの新しい関係性を探っていきたいです。

我が編集部の自慢は?
店のワインがなくなるほどの酒豪揃い!

酒豪揃いで、忘年会のときにレストランのワインを飲みきったことがあります。セレブのダイエット法は、パレオダイエット以外はすべて実証済みです。

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