東レは9月5日、回収ペットボトルを繊維原料として再利用する取り組みを本格的に開始すると発表した。これは循環型社会実現に向けた取り組みで、そのために多様な品種と高い白度、トレーサビリティー(トレース/追跡とアビリティー/可能の2つの言葉を合わせたもので、製品の原料から生産工程までの追跡が可能なこと)を実現したペットボトルリサイクル繊維の生産技術を開発。“Together, We are the New Green”をコンセプトにした繊維事業の新ブランド「&+(アンドプラス)」 を立ち上げた。2020年1月から本格的に糸、テキスタイル、縫製品など「&+」製品の販売を開始し、初年度の売上高は300億円、25年には500億円を計画する。
東レの技術力でバージン原料と同等の品質を担保
これまでのペットボトルリサイクル繊維は、混入異物により特殊な断面や細さの繊維の生産が困難で、糸種が定番品に限られる点や、ペットボトルの劣化などによる黄ばみが原因となって、糸の白さが損なわれる点が課題だった。これに対して東レは、ペットボトルリサイクル原料に含まれる異物を除去する東レのフィルタリング技術と、ペットボトルの高度な洗浄技術を持つ協栄産業の技術を合わせることで、異物の黄ばみを除去した原料の供給安定化を実現。この原料と東レの技術を組み合わせることで、石油由来のバージン原料を使用した場合と同様の品質を担保できる。
同ブランドはGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード:リサイクル含有物、加工流通過程管理、社会および環境慣行、および化学規制の第三者認証の要件を設定する、国際的で自発的な完全製品基準)認証に基づき、回収ペットボトルの繊維原料の割合は20%以上で構成する。リサイクル原料100%でも同等の品質を担保できるというが、取引先の要望に合わせてリサイクル原料の配合率を変えていく。
狙うのは環境や社会問題に関心が高いジェネレーションZ
舟橋輝郎ファイバー事業部門長は開発の背景について、「当社のペットボトルリサイクル繊維を介して、製品に関わる回収者・生産者・消費者が相互につながることを促進することで、ペットボトルリサイクルの活動を社会的なムーブメントに高め、循環型社会実現への貢献を目指したい。調査会社のニールセン(Nielsen)が15年に60カ国3万人を対象にしたオンライン調査によると、約66%の回答者がサステイナブルな商品により多くのお金を払いたいという結果がある。さらにその72%が信頼するブランドの商品を求めていることがわかった。われわれが狙うべきは、ジェネレーションZ(1995~2009年生まれ)。米国のジェネレーションZ世代の直接購買力は2000億ドル(約21兆2000億円)を超えており、20年までに世界最大の消費グループになると見込まれているからだ。また、彼らは環境や社会問題に関心が高く、それらの問題へ意見を表明するブランドを支持する傾向にある。本物を追求し、信頼性のあるもの、トレーサブルで環境や社会に配慮したものを好む」と語る。
加えて、舟橋部門長は、日本のペットボトルリサイクルの現状を指摘する。「中国を皮切りに一部のアジアの国で廃プラゴミの輸入規制が始まった。そのため自国内での処理を進めることが重要になっているが、ゴミ処理施設が不足している。これまで輸出していたものを再利用して資源化することが重要だと考えた」と語る。
実は、東レのペットボトルリサイクル繊維の生産量は多くなく、18年の売り上げは15億円程度だった。「決して大きくなかったが、市場の要求に応えると急拡大が必要だ。当社の革新技術と先端材料の提供によって、世界が直面する“発展”と“サステイナビリティー”の両立をめぐるさまざまな問題の解決に貢献していく」。