ナイキ(NIKE)は9月19日、年次株主総会を開催した。マーク・パーカー(Mark Parker)会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)が登壇し、イノベーションのさらなる推進や個別の消費者へのフォーカスなど今後の展望を語った。
同社は2017年6月に新戦略「コンシューマー・ダイレクト・オフェンス(Consumer Direct Offence)」を発表。これはニューヨーク、ロンドン、パリ、東京、上海など世界の主要12都市での事業拡大に注力し、デジタル面を強化することで商品流通のスピードアップを図って消費者との距離を縮めるというものだ。それが奏功し、同社の19年5月期決算は売上高が前期比7.4%増の391億1700万ドル(約4兆2246億円)、純利益が同108.4%増の40億2900万ドル(約4351億円)と増収増益だった。
パーカー会長兼社長兼CEOは、「業績が好調なのは偶然ではなく、正しい戦略を実行した結果だ。新たなクッショニングソール“ジョイライド(JOYRIDE)”を用いたシューズなどの画期的な新製品も業績に大きく貢献した」と説明した。
「ナイキ」はウィメンズの売り上げが急激に伸びており、18年には2ケタ成長を記録した。また、19年FIFA女子ワールドカップ フランス大会(FIFA WOMEN’S WORLD CUP FRANCE 2019)に出場した24カ国のうち、オーストラリア、ノルウェー、イングランド、アメリカ、フランスなどを含む14カ国のユニホームを手掛けたことや、同大会でアメリカチームが優勝したことなども売り上げに寄与しているという。同氏は、「ウィメンズ市場ではまだ浸透率が低く、今後も大きく成長する余地がある」とコメントした。
同社はまた、来年に迫った20年東京オリンピック・パラリンピックに向けて着々と準備を進めているという。同氏は、「東京オリンピックは(スポーツブランドにとっての)期末試験のようなものだ。満足のいく結果となるように頑張りたい」と意気込みを述べた。事業全体については、「19年度も成功の年となるだろう。今後も『ナイキ』らしい、画期的な機能性と魅力的なスタイルを兼ね備えた製品を発表していく」と表明した。
参加者からは、米独立記念日の7月4日に発売を予定していた“エア マックス 1 クイックストライク(AIR MAX 1 QUICK STRIKE)”特別モデルをなぜ発売中止にしたのかという質問が上がった。同モデルには、独立戦争当時に考案された「ベッツィー・ロス・フラグ(Betsy Ross Flag)」と呼ばれる13個の星があしらわれた星条旗がかかとの部分に描かれていた。米「ウォールストリート・ジャーナル(WALL STREET JOURNAL)」紙によれば、これに対してアメフト選手のコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が、「奴隷制時代に使われていた旗であり、侮辱的で人種差別的だ」と指摘したという。パーカー会長兼社長兼CEOは、「懸念の声が多かったので、発売中止を決定した。誰かを侮辱する意図はなく、独立記念の喜ばしい日を損ねたくなかった」と答えた。