八木通商は9月25日、高級人工ファーで知られる香港のエコペル(ECOPEL)を傘下に持つ仏プレシラ社(PRESILLA LIMITED)と戦略的な資本提携で合意したと発表した。八木通商はプレシラ社に20%を出資し、2019年末までにエコペルジャパン(仮)を設立する。出資額は非公開。エコペルジャパンの代表には八木雄三・八木通商社長が就任する予定だ。
仏プレシラの子会社で香港を拠点にするエコペルは、同名の高級人工ファーを世界の有力ブランドに販売してきた。八木通商は16年3月から「エコペル」の日本における輸入・販売を行ってきたが、この戦略的提携によってこれまでの単なるエージェント活動ではなく、日本市場において20-21年秋冬向けからエコペル社が生産する商材の独占的な販売・マーケティング活動を行い、ブランドバリュー向上とビジネスの拡大を図る。また米子会社を通じて、アメリカ市場においても独占的に販売・マーケティング活動を行う。将来的には八木通商とプレシラ社両社でジョイントベンチャーを立ち上げ、アメリカ市場でのさらなるビジネス拡大を目指すことも視野に入れている。
加えて、八木通商グループが保有する英国および中国の縫製工場においてエコペル社の人工ファー素材を用いた製品の縫製を行う。
強みは本物と見間違えるほどのクオリティーと開発力
「エコペル」は本物の毛皮と見間違えるほどの技術力と開発力の高さから、ラグジュアリーブランドからストリートブランドまでが用いており、ブランドの相次ぐ“脱”毛皮宣言を受けて近年は毎年20%増の成長を続けている。19-20年秋冬向けからはリサイクルポリエステル100%の人工ファーを提案し、サステイナビリティーにも力を入れる。現在、アメリカのデュポン社(DUPONT)とトウモロコシ由来の人工ファー“コバ(KOBA)”の共同開発に力を入れており、37%植物由来の製品化に成功している。100%植物由来の人工ファーは2年後をめどに完成させる意向だ。なお、この原材料はトウモロコシからバイオエタノールを作る際に出る廃棄物を用いている。
エコペル社によると、100%リサイクルポリエステルを用いた場合、バージンポリエステルに比べてエネルギー量は84%、温室効果ガスは71%削減でき、また植物由来も同様に、バージンポリエステル使用に比べてエネルギー量も温室効果ガスも大きく削減できるという。価格は現在リサイクルポリエステルがバージンポリエステルに比べて15~20%程度、植物由来が30~40%高いが、「トレンドがさらにサステイナビリティーに移れば生産コストが下がるため、ゆくゆくは同価格にしたい」(エコペル社)意向だ。
「市場がサステイナブル素材を求めている」
八木雄三社長は、「世界の消費者はエコロジーに関心があり、特に欧米のアパレルメーカーは生地や糸の条件にサステイナブルかどうかが入る。市場からの要望を満たすために今回の戦略的提携を行った。これからの時代は、強い者(企業)同士が結び付いていかないと生き残れない。今はデザインの要望はもちろんだが、サステイナビリティーも備えていないと販売できない時代だ。彼らの強みは圧倒的な開発力にある。彼らとともに世界のトップブランドに特別な商品を提供したい」と語る。
一方、クリストファー・サルファティ(Chrisopher Sarfati)=プレシラ社社長は「多くの提携話があったが、八木通商を選んだのは信頼関係が構築できたから。また同社は、テキスタイルや糸を扱うだけでなく、『モンクレール(MONCLER)』や『マッキントッシュ(MACKINTOSH)』といったラグジュアリーブランドを扱っており、いろんな可能性が見いだせた。もともとは父のジェラルドが動物を救いたいという思いで50年前に人工ファー専門メーカーとして創業した。毛皮を着なければ年間2000万頭の動物を救える。もちろん私たちが直接救えるわけではないけれど、リアルに近いファーを作ることでその手助けはできる。今は人工ファーがファッショナブルになっていて、ハイファッションブランドのシェアはほぼ100%に近付いている。今は、リサイクルや植物由来の人工ファーの売り上げは15~20%程度だが、ゆくゆくは全てをサステイナブルなものにする」と意気込む。