「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを擁するケリング(KERING)は、自社および全サプライチェーンの温室効果ガスの排出量を2025年までに15年と比較して50%削減することを目指す。ケリングは18年からグループ全体の年間温室効果ガス排出のオフセット(相殺)を最優先課題としている。
すでに「グッチ」が9月末までにサプライチェーン全体で排出した温室効果ガスの完全オフセット実現を発表しているが、今回の発表はそれに続くもの。
ケリングが進める主な取り組み
・SBT(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体であるCDP、国際環境NGOの世界資源研究所WRI、世界自然保護基金WWF、国連グローバルコンパクトUNGCによって14年9月に設立された団体)イニシアチブによる削減目標全体の20%以上を達成するために、原材料と製造プロセスに関するケリング独自の基準を導入する。
・グループの事業活動におけるさらなるエネルギー効率の向上に注力し、15年に比べてグループの店舗の炭素強度(消費量に対する二酸化炭素排出量)を30%削減する。
・グループ全体で再生可能エネルギーの使用を100%にするために、同エネルギーへの変換を促進する。
・主軸となるのは製造効率で、そのための革新的プログラムを採用している。例えば、織物工場向けの「クリーン・バイ・ デザイン」プログラムは、年間12%の二酸化炭素排出の削減につながっている。
・同業他社との協力のもと、「ファッション協定」を通じてファッション業界の脱炭素化を支援できる取り組みとソリューションをサポートしている。
ケリングは原材料の生産を含むグループ全体の温室効果ガス排出を分析するために、それを数値化する環境損益計算書(EP&L)を開発して15年から活用している。これにより、環境負荷を効果的に削減するための独自のサプライチェーンへの取り組みや、効率化を目指すプログラムを導入することができるようになった。
ケリングでは、サプライチェーン全体の環境負荷を回避および削減することを優先課題として注力していくが、現在、バリューチェーン全体で発生した温室効果ガスも残存するものを年次ベースですべて相殺している。18年のEP&Lの結果によると、グループ全体の残存温室効果ガス排出の合計は二酸化炭素量は約240万トンで、そのオフセット(相殺)は、森林と生物多様性を保全し、地域社会の生活をサポートする、REDD+(レッドプラス:森林伐採による二酸化炭素排出量の増大とそれによる気候変動を防ぐための対策)プロジェクトを通じて引き続き行う。
ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=会長兼CEOは「気候変動に関して言えば、もはや実際に行動するのを待っている予裕はなくなった。私たちは皆、ビジネスを発展させるだけでなく、発生する温室効果ガス排出量を計上する必要がある。ケリングは、すべての事業活動およびサプライチェーン全体でグループとして完全にカーボンニュートラル化を達成することを約束する」とコメントを発表した。