伊勢丹相模原店(神奈川県)が30日、最後の営業日を終え、閉店した。開店前は、朝7時に到着した女性2人組を先頭に約1500人が列を作った。開店すると、入店客一人一人に山下洋志店長が頭を下げて出迎えた。なお、伊勢丹府中店(東京都)も同日をもって営業を終了した。
相模原店の正面入り口手前にはアルファベットで「ISE AN」のオブジェが飾られ、EとAの間に入って水平に手を伸ばし、最後の記念撮影を楽しむ客の姿も多く見られた。入り口扉から入ってすぐの壁面には、地域の伊勢丹ファンや近隣の小学生らから届いた約700枚のメッセージカードを飾った。
来店客の多くは、長年の顧客であるシニア層の男女。近隣に住む顧客の69歳の女性は「今日が最後かと思うと悲しい。娘との買い物や、孫の高校の制服をここでそろえたのがいい思い出」と懐かしんだ。
同店は7月中旬から最終営業日まで「ファイナルフェスタ」と題した閉店セールを実施し、各階に特設ブースを設置した。2階服飾雑貨コーナーではマフラーや手袋、ニット帽子などのワゴンセールに女性たちが群がる光景もみられた。3階婦人服ではカットソーなどの軽衣料、4階紳士服ではベルトやネクタイなどのセール品売り場も活気があふれていた。
また、3階婦人服フロアの「ダブルビー(WB)」や「自由区」など各ブランドの店舗では、増税前の駆け込みで買い物を楽しんだり、なじみの店員との別れを惜しんだりする顧客の姿が多く見られた。6階子供服売り場の「ポロ・ラルフローレン(POLO RALPH LAUREN)」は親子連れでごった返した。
閉店時刻(19時)になると惜別ムードが漂う中、正面入口で集まった客を前に山下店長が最後のあいさつをした。「オープン以来、私たちにとって最も幸せだったことは、皆さまにお会いできたこと。ここで働く従業員もそれぞれ別の道を歩き始めるが、これからもここ相模大野で頂けたご縁を大切に、歩み続けていきたい」と締めくくった。
同店は開店当初(90年9月)、高嶋政宏主演のドラマ「デパート!夏物語」の舞台として話題となった。地域唯一の百貨店として29年の歴史に幕をおろした同店は、同日営業終了した府中店とともに、建物は今後「売却も含め検討中」(三越伊勢丹広報)という。