「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の川久保玲がディレクションするコンセプトストア、ドーバー ストリート マーケット(以下、DSM)は10月2日、パリ・マレ地区に香水やコスメに特化したビューティの店をオープンした。DSMとしては世界で7店目となり、アイテムを絞り込んだ店はこれが初めて。地上1階、地下1階の2層で計200平方メートルという店舗は、同店としては小型だ。DSMの最高経営責任者(CEO)でもあるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン インターナショナルCEOは、「今後はビューティと同様に、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した店をベルリンやミラノなどに出店していきたい」と語る。同店のコンセプトや、今後の展望をジョフィCEOに聞いた。
WWD:なぜビューティに特化したのか?狙いは?
エイドリアン・ジョフィCEO(以下、ジョフィ):ロンドンや銀座のような店はもちろんパリでもやりたいが、適当な物件がなかなか見つからない。ヴァンドーム広場にあった「コム デ ギャルソン」の香水のストアを昨年閉め、もっと大きな店を作ろうとしていたが、パリはビューティ(産業)の発祥地だし、それなら自社のブランドだけでなくDSMのDNAを生かしてさまざまなブランドを混ぜていく方が面白いと思った。そういった経緯があるので、DSMが手掛けるアイテム特化型店の1号がビューティの館になったのは自然な流れだ。
WWD:DSMは“ビューティフルカオス(美しい混沌)”を常に店作りの軸としている。
ジョフィ:今回の店ももちろん社長(川久保玲コム デ ギャルソン社長)がディレクションしている。床も壁も真っ白で何もなく、変なディスプレーももちろんない。一般的なビューティ産業は(売り場の内装などが)非常に保守的だと感じる。それとは全く違うものを作ることに興味があった。内装は(什器となる)柱がいくつも立っていて、まるで柱の森のように作り込んだ。パッと見れば全てが目に入るのではなく、店の中を探検することで、商品を見つけ出すような内装にしている
WWD:どんな商品を扱っているのか?
ジョフィ:65ブランドを扱う。軸となるのは、「グッチ(GUCCI)」の香水やメーキャップ商品、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」の香水、「バイレード(BYREDO)」の香水やボディケア商品、「M・A・C」のメーキャップ商品だ。「トム ブラウン」の香水は世界に先駆けてここで販売している。各ブランドの商品を陳列している柱は一つ一つ社長がデザインしているが、「トム ブラウン」の柱は期間限定でトムがカスタムしており、ブランドを象徴するグレーの生地で柱を覆っているのがポイントだ。催事スペースもあるので、毎月イベントを行なっていく。オープン時に開催しているのは「M・A・C」のイベントだ。アイライナーやボディペイントなどに使用するアイテム数点を社長がキュレーションし、タトゥーキットとしてパッケージングした。品ぞろえ全体としては、10万円以上する商品もあるし、スウェーデン軍が採用している保湿バームなど、200円で買えるものもある。パリではこの店だけで扱う商品も豊富だ。
WWD:「このブランドを扱いたい」と思う時の決め手は何か?
ジョフィ:ストーリーがあること。ヴィジョンがあってメッセージを持っていること。“ノンバイナリー(性差などを超えた多様性)”の打ち出しや、ハンドメイドのブランド、オーガニックであることなどもそうだし、もちろん美的感覚はコム デ ギャルソンにとって非常に大切だから、見た目がカラフルで美しいといった点にひかれることもある。例えば「コスタ ブラジル(COSTA BRAZIL)」というオイルやキャンドルのブランドは、ファッションデザイナーだった人物がアマゾンの熱帯雨林で見つけた自然のオイルから作っているオーガニックなブランド。そんな風に、ストーリーを持っているブランドにひかれる。
WWD:パリのアイコンセレクトショップ、コレットが17年末に閉店して以来、DSMへの出店の期待は高いのでは?
ジョフィ:実は、コレットのサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)とはコンサルティング契約を結んでおり、サラから紹介されて仕入れたブランドもある。コレットの閉店を受け、「パリにDSMを出店するべき」とは多くの人にいわれた。しかし、求める物件がなかなか見つからないし、コレットとは品ぞろえの考え方で似ている部分があるにしても、どんな店であれコレットの代わりにはならないと思う。
WWD:今後の出店計画は?物件を選ぶ時の決め手は?
ジョフィ:ビューティだけでなく、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した小型店を各国に出していきたいし、全てのアイテムがそろう大型店も出店したい。ただ、現時点で進行中のプロジェクトはなく、出店は時間をかけて1つずつ進めていければと思っている。出店を決める際は、エリアよりも建物がすばらしいかどうかが大事。建物に関してはDSMとして統一したコンセプトがあるわけではなく、銀座のビルは非常にモダンだし、ロサンゼルスは古い倉庫のよう。面白くて雰囲気のある建物かどうかが決め手だ。今回のパリ店は、たまたまちょうどいい面積の物件が見つかったというのもあるし、(エリアは重視しないといったが)店が点在していて、人が行き交い発見があるマレという地域が面白いと思ったところもポイントだった。
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