9月29日に日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請した米ファストファッションチェーン「フォーエバー21(FOREVER 21)」だが、同法の手続きを待つ間の資金繰りに苦慮している。
これはおよそ4000万ドル(約42億円)の賃料と1800万ドル(約19億円)の賃金の支払い期限が迫っているためで、同社は10月1日、融資される運転資金の一部を即座に利用できるようデラウェア州の連邦破産裁判所に申し立てた。
同社は2億2800万ドル(約243億円)の長期負債に加えて3億5000万ドル(約374億円)程度の仕入れ債務を抱えているが、当面の運転資金として米金融大手JPモルガン・チェース(J.P. MORGAN CHASE)を仲介して2億7500万ドル(約294億円)を調達しているほか、米投資会社TPGシックス・ストリート・パートナーズ(TPG SIX STREET PARTNERS)からも新たに7500万ドル(約80億円)の融資を確保している。フォーエバー21は後者の融資のうち6000万ドル(約64億円)を即座に利用可能にし、長期負債の返済に充てることで借入枠を空け、諸経費を支払うための新たな借入れを可能にしたい考えだ。
今後は債務整理を行いながら事業再建を目指すが、その一環として店舗網を縮小する。米国で展開する549店のうち178店を閉店するほか、ヨーロッパやアジアの店舗のほとんどを閉店する予定だ。なお、中国市場からは19年5月に完全撤退しており、日本でも10月末で全店舗とECを閉鎖する。
情報筋によれば、「フォーエバー21」のマンハッタン・タイムズスクエア旗艦店は売り場面積がおよそ8300平方メートルとかなり広く、2000万ドル(約21億円)の賃料を払っているにもかかわらず、売り上げは年間3000万ドル(約32億円)程度だという。同旗艦店の賃料について、同社のコメントは得られなかった。また、同社は05~15年に全世界で200店以上をオープンしているが、その70店以上が面積3250平方メートルを超える大型店だった。
残す店舗に関しても、同社は土地やショッピングモールの所有者に対して店舗面積の縮小や賃料の値下げを交渉する予定だが、多くは協力的な姿勢になるものと見られている。小売業者の経営破綻が相次ぐ中で、「フォーエバー21」はモールなどの商業施設の一角を担う存在だからだ。一方で、事情を知る不動産業者は、「土地などの所有者が賃料の大幅カットに応じるに当たって、財務の透明性や説明責任を求めてフォーエバー21の経営に関わることを条件にする可能性がある」と話す。しかし、同社の創業オーナーであるドン・チャン(Do Won Chang)とジン・チャン(Jin Sook Chang)夫妻がこれをよしとしないことが予想されるため、交渉が難航するのではないかという。
次回の審問は10月28日に行われるが、同社はその際に閉店などの正式な計画を提出する予定。