2020年春夏のロンドン・ファッション・ウイーク(19年9月開催)のショー会場に現れたファッショニスタたちの着こなしで目立ったのは、レディーライクなムードでした。毎シーズンのトレンドを先取りして会場に現れる彼女たちの装いは、そのまま“的中率高めのファッション流行予報”。特に目を引いた小物が、髪飾りの“カチューシャ”です。今回はショー会場周辺という“リアルランウエイ”でキャッチしたカチューシャレディーたちのスタイリング技をご紹介します。
カチューシャ復活のきっかけを作ったのは、19年春夏コレクションの「プラダ(PRADA)」でしょう。極太のカチューシャが話題をさらいました。最近では、歌手のアリアナ・グランデが着けた、レジン加工パールとクリスタルで華やかにしたカチューシャが「ジバンシィ(GIVENCHY)」から“アリアナ・ヘッドバンド”として商品化され脚光を浴びました。このように、カチューシャ人気はジワジワと浸透していき、バリエーションも拡大しています。
ロンドン女子には歴史的に古着やストリートのイメージがありますが、今回の来場者たちはより古風なテイストをミックス。主要ブランドからはヴィクトリアンのムードが提案され、英国趣味とクラシカルはさらに加速しそうな気配です。こうした流れにノスタルジックな気分のカチューシャはなじみます。カチューシャを使って、“ニュークラシック”にアレンジするコーディネート技に注目してみました。
◆お嬢さまムードにあえてマニッシュをミックス
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カチューシャにはお嬢さまなムードがあるので、服はマニッシュなものを合わせると程よいミックス具合に仕上がります。写真の女性は、白シャツの上からミリタリー由来のCPOジャケットを羽織って、メンズっぽさを投入。ボトムスはミニスカートにして若々しく。また、足元にはボリュームシューズを合わせて脚をスレンダーに演出しています。メンズ(ジャケットと靴)とウィメンズ(カチューシャとミニスカート)の交差を意識すると、このような着映えになります。
◆“プレッピー”をはずすラブリー仕掛け
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アメリカの名門校に通う男子学生のファッションに由来する“プレッピー”に復活の兆しがありますが、その源流にあたるロンドンでは、早くも来場者の間でプレッピーを取り入れる動きが広がっていました。ボーイッシュなところのあるプレッピーだけに、ラブリーなパウダーピンクのカチューシャを使った“ずらし”が効果的。甘いピンクのカチューシャもこのようにシャツと合わせれば取り入れやすそう。足元をハイカットスニーカーではずすのがいかにもロンドン流です。
◆“ヴィンテージ×ロマンティック”の懐かしげコーデ
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クラシックな装いが盛り上がる中、カチューシャはクラシックと相性抜群なヘッドアクセサリーです。写真の女性は、ビンテージ風のフラワープリントを彩ったワンピースにパウダーピンクのカチューシャを添えて、懐かしげなたたずまいに。シャンデリアのような大ぶりイヤリングも貴族感を漂わせます。これだけ盛ってもロマンティックになりすぎていないのは、白ブーツで軽やかに引き締めたおかげです。
◆ヴィクトリアンを現代的にアップデート
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今回のロンドンコレクションでは、ヴィクトリアンテイストのトレンドが勢いづきました。来場者もいち早く“オールド英国感”を取り入れていました。でも、当時そのままではなく、モダンにアップデートすることが重要です。ふかふかした台にビジューをあしらったゴージャス系カチューシャは、ロイヤルな気分を帯びています。ラッフルをたくさん飾ったドレスはゆったりシルエットで、気負わないブルジョワ淑女のたたずまい。カチューシャがムードメーカーになっているのは言うまでもありません。
ヘアピンやヘッドアクセサリー、ヘッドスカーフなど、“頭を飾る”アイテムが数シーズン前から関心を集めていますが、今回は、さらにエレガントなカチューシャがキーピースとして浮上しました。極太やデコラティブなど、提案されているデザインもさまざまで、普段の装いに加えるだけでムードが様変わりしそう。スカーフやヘアピンより手軽に着脱できるので、自在に扱いやすいのも長所です。秋冬の装いにレディーなムードを加えたかったら、今季はカチューシャを試してみては。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い