独アディダス(ADIDAS)は11月11日、本社近くのドイツ・アンスバッハと米国アトランタにある最新鋭工場”スピードファクトリー(SPEEDFACTORY)”での生産を、2020年までに終了すると発表した。スピードファクトリーは自動化と生産設備のIoT(モノのインターネット化)を軸に短時間で超多品種生産を行うマスカスタマイズ生産をコンセプトにしており、ドイツや米国など消費地の近くに工場を構え、日本に工場を作る計画もあった。アディダスは「多種多様なアイテムを短時間で生産できるスピードファクトリーの設備はアジアの2つのサプライヤーに移管する。アディダスは引き続き4Dテクノロジーを活用した生産に取り組む」としているが、IoTを軸に超多品種のアイテムを生産する”インダストリー4.0”構想は後退する。
11日の発表を受け、主力サプライヤーの台湾・宝成工業の株価は現在、前日の終値から1.23%高い41.2台湾ドルとなっている。アディダスのマルティン・シャンクランド(Martin Shankland)取締役グローバル生産担当は「われわれはスピードファクトリーを通して短時間のマスカスタマイズ生産を実現してきた。ただサプライヤーにその設備を組み合わせた方が、柔軟かつ経済的に生産できることが分かった」とコメントを発表している。また、3Dプリンタやウルトラブースト(ULTRA BOOST)などのハイテクソール生産で提携していたドイツの成型機大手のエクスラー(OECHSLER)との提携関係は継続する。
アディダスとナイキが主導してきたスニーカー生産は、再編が続いている。ニットスニーカー用の横編機を供給してきた大手編み機メーカーの島精機製作所も、丸編機メーカーの攻勢により販売が激減し、19年4〜9月期は赤字に転落している。