2020年東京オリンピック男子・女子フルマラソンの日本代表選考会を兼ねた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が9月15日に行われ、男子は中村匠吾選手(富士通)と服部勇馬選手(トヨタ自動車)が、女子は前田穂南選手(天満屋)と鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)が内定を勝ち取った。最近のマラソン大会ではレース結果はもちろん、選手が着用するシューズにも多くの注目が集まっている。「MGC」でもどのメーカーが勝つのか話題になっていたが、結果は大方の予想通り「ナイキ」の圧勝だった。内定を決めた4人のうち3人がピンク色が映える同ブランドの新作“ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%”を着用していた。女子1位の前田選手のシューズは「アシックス」、男子4位の大塚祥平選手(九電工)は「アディダス」と他メーカーを履いた選手も見られたものの、シェアでは「ナイキ」が男女40人中約半数を占めた。レース当日に選手が着用したピンクカラーのモデルを発売した「ナイキ」の強気なプロモーションは成功したといえるだろう。(この記事はWWDジャパン2019年9月30日号からの抜粋です)
そもそも、このシューズ論争が始まったきっかけは「ナイキ」の厚底シューズだった。同社は2016年にフルマラソンで2時間切りを目指すプロジェクト「ブレーキング2」を始動し、世界記録保持者であるケニアのエリウド・キプチョゲ選手らを招へいしてシューズやトレーニングの研究を行った。17年には同プロジェクトで得たデータをもとに、厚手ソールの“ズーム ヴェイパー フライ4%”を含む3型のランニングシューズを発売。この時点ではまだ一部のスポーツファンの間で話題になる程度だったが、同年にキプチョゲ選手らが2時間切りのレースに挑戦したり(結果は非公認記録で2時間25秒)、18年に厚底シューズを着用した設楽悠太選手(ホンダ)が日本記録を叩き出し、さらにその記録を大迫傑選手(ナイキ)が更新したりするなどして「厚底は速い」というイメージは世間でも浸透していった。当初は競技用として中上級ランナーに人気だったが、ナイキジャパン広報によると今では初心者ランナーにも売れているという。一つの技術革新で、市場のシェアをがらりと変える事例を作った。
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