1906年に大阪で水野利八が創業して以来、日本が世界に誇る総合スポーツ用品メーカーとして100年以上の歴史を持つミズノ(MIZUNO)。サッカーの本田圭佑選手や中島翔哉選手ら多くのトップアスリートたちの足元を支えていることで知られているが、その一方でここ1〜2年、ライフスタイルのシーンにおいてもその存在感を強めている。
と言ってもミズノはこれまで、1970年代初頭に誕生したサイドのMマークが特徴的な“Mライン(M-LINE)”をはじめ、82年の発表後そのアイコニックなマークから企業ロゴになった“ランバード(RUNBIRD)”、97年に生まれた「ミズノウエーブ」と呼ばれる波形のプレートを搭載した“ウエーブ ライダー(WAVE RIDER)”、空洞のソールが印象的な2007年の“ウェーブクリエーション(WAVE CREATION)”など、各年代ごとに象徴的なオリジナルシューズをいくつも発表してきてたのは言わずもがな。そして昨年、歴代スニーカーを新たに生まれ変わらせるべく、世界中のブランドやショップをパートナーに迎え、家族のように手を取ってコラボレーションするというプロジェクト「KAZOKU」をスタートさせたのだ。
「KAZOKU」の名の下に発表されたのは全21モデルで、シリーズはそれぞれのパートナーのエッセンスを注ぎ込んだコラボモデルと、ミズノが彼らから得た知見をもとに現代版へとアップデートしたオリジナルモデルから構成されている。単純計算で1カ月毎近い驚異的なスピード感で発表しており、来週には第22弾目となるモデルの発売が控えるなど、よほどのスニーカー好きではない限り全モデルを把握している人は多くないだろう。そこで今回は、スニーカーシーンに満を持して参戦した「ミズノ」の「KAZOKU」の軌跡を振り返りたい。
第1弾
MITA SNEAKERS
“WAVE RIDER 1 NO BORDER MITA SNEAKERS 「KAZOKU」”
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記念すべき第1弾は、1997年発売のパフォーマンスシューズ“ウエーブライダー 1”を復刻し「KAZOKU」始動のきっかけになった、国井栄之率いるミタスニーカーズとコラボした。履かれる環境が競技トラックからストリートへと変わったものの、どちらの環境にもブルー(競技場のトラック、路上の標識)とホワイト(白線)があることから、アッパー全体をブルーに染め上げトウ部分にホワイトラインを走らせた。ミッドソールのマーブル柄は、アスファルトをイメージしたものだとか。
第2弾
ORIGINAL
“WAVE RIDER 1 OG”
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前月にミタスニーカーズと復刻させた“ウエーブライダー 1”のオリジナルモデルを忠実に再現。全体のボリューム感やアウトソールのディテールにこだわりながら、軽量化とフィット感、安定感を持たせた。前作に引き続き、シュータンには今では使われなくなった“ワードM”のロゴがあしらわれたファンにはうれしい一足に。
第3弾
HIGHSNOBIETY
“WAVE RIDER 1 PHOENIX”
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第3弾では、ドイツ・ベルリンを拠点とするウェブメディア「ハイスノバイエティー」とのコラボという意外性のあるモデル。“ウエーブライダー 1”をベースモデルに、ディレクションはベルリンの人気スニーカーショップ、ソールボックス(SOLE BOX)の創設者でスニーカーデザイナーのヒクメット・スガー(Hikmet Sugoer)が担当。“REBIRTH”をテーマに、不滅や再生の象徴であるフェニックスをイメージしたカラーリングに仕上げた。
第4弾
LA MJC
“WAVE RIDER 1 LAMJC”
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年1回刊行のストリートカルチャー誌「オール ゴーン(ALL GONE)」で編集長を務めるマイケル・デュポイ(Michael Dupouy)が主宰するパリのクリエイティブ・エージェンシーLa MJCとのコラボでも、“ウエーブライダー 1”がベースモデルに採用された。芸術家デイヴィッド・ハモンズ(David Hammons)の代表作「African American Flag」をインスピレーション源に、アフリカ諸国の国旗でたびたび使用されるレッドとグリーン、そしてブラックという大胆な色使いが目を引くモデルが生まれた。
第5弾
CLUB75
“COURT SELECT CLUB75”
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第4弾のパートナーであるマイケル・デュポイが手掛けるフランスのブランド「クラブ75」を第5弾のパートナーに迎えた。ベースとなったのは1993〜94年にヨーロッパ限定で展開されていたバレーボールシューズ“コートセレクト”で、差し色のピンクとパープルから爽やかさとどこか懐かしさが感じられる。ピッグスエードのヒールには、「クラブ75」のブランドロゴがエンボス加工であしらわれた。
第6弾
PATTA
“SKY MEDAL PATTA”
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1990年代に販売されていたランニングのトレーニング用シューズ“スカイメダル TR”を復刻し、オランダを代表するストリートブランド「パタ」とコラボした。サイドの“ランバード”とシュータンのロゴが「パタ」らしいオレンジに変更されており、どこかレトロな雰囲気が漂う。復刻と合わせてクッショニングシステム“トランスタブ(TRANSTAB)”をアップデートし、履き心地も快適に。
第7弾
ORIGINAL
“SKY MEDAL OG”
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「パタ」とのコラボでベースになった“スカイメダル TR”を、オリジナルカラーで復刻。“スカイメダル TR”は1990年代の発売当時、シュータンと履き口を一体とすることで足全体のフィット感を高める“インターナルソックフィットシステム”などで人気を集めたモデル。“ランバード”のグラデーションが美しい一足だ。
第8弾
ORIGINAL
“COURT SELECT OG”
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第5弾の「クラブ75」とのコラボでベースになった“コートセレクト”を、アッパー全体に天然皮革を使用するなど素材も再現してオリジナルカラーで復刻した。“ウエーブライダー 1”と“スカイメダル TR”同様、名のあるパートナーとコラボモデルを発売した直後にそのオリジナルを復刻するという、ミズノのマーケティングのうまさが光る。
第9弾
BEAMS
“SKYMEDAL BEAMS”
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ビームスとの“スカイメダル TR”は、シュータン上部に日の丸を連想させる夕日を、中部に旧社名の美津濃の“美”をあしらうという、日本を代表するブランドとセレクトショップの協業にふさわしい和のテイストあふれるモデルとなった。インソールがオレンジ一色であるのもビームスならではだろう。
第10弾
24 KILATES
“KING KOBRA WAVE RIDER 1”
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記念すべき「KAZOKU」の第10弾は、スペイン・バルセロナとタイ・バンコクを拠点にするスニーカーショップの24キラテスをパートナーに迎えた“ウエーブライダー 1”だ。タイで神聖な動物とされているキングコブラをテーマに、アッパーの大半にエンボス加工されたスネーク柄の素材を使用し、シュータンにはキングコブラのイラストをあしらうなど、「KAZOKU」の中でもひときわゴージャスなデザインとなった。
第11弾
ORIGINAL
“WAVE RIDER 1 OG 2ND COLOR”
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第10弾までの「KAZOKU」の5モデルに採用されてきた“ウエーブライダー 1”だが、オリジナルモデルのセカンドカラーが第11弾で復刻された。ホワイト × イエロー × ブルーのカラーリングにどこか既視感を覚える一方で、ダッドスニーカーの“ダサさ”も取り入れて今っぽい出来栄えに。もちろん、シュータンには“ワードM”のロゴが光る。
第12弾
MITA SNEAKERS & WHIZ LIMITED
“SKY MEDAL GREYSCALE WHIZ LIMITED x MITA SNEAKERS "LIMITED EDITION FOR KAZOKU"”
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これまで数々のスニーカーを生み出してきた下野宏明率いる「ウィズ リミテッド」とミタスニーカーズという名コンビを迎え、トリプルコラボの“スカイメダル TR”を製作した。特徴はトーンの異なるグレーとブラック、ホワイトの3色からなるカラーリングの妙。「ウィズ リミテッド」のアイコン“ハートビート(heartbeat)”がさりげなくシュータンに刺しゅうされているのもポイントだ。
第13弾
ORIGINAL
“CITY WIND OG”
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2019年に入ってからの1作目となった第13弾は、人工芝からハードコートまでどんなコートでもプレーできるオールコート用テニスシューズとして1989年に誕生した“シティウィンド”を復刻。スムースレザーのホワイトアッパーにブラックの“ランバード”というシンプルな姿に懐かしさを覚える人も多いのではないだろうか。
第14弾
SAYHELLO
“COURT SELECT SAYHELLO”
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「KAZOKU」シリーズ初となる2色展開となった東京発グラフィックレーベル「セイハロー」とのコラボでは、“コートセレクト”をベースに採用した。「セイハロー」感のあるカラーリングのアッパーにスエードとヌバック素材を使用することで、いい意味での野暮ったさを演出。アウトソールをクリアラバーに変更しているのも彼ららしい。
第15弾
AFEW STORE
“SKY MEDAL HEIMAT”
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第15弾ではなんと、ドイツ・デュッセルドルフのスニーカーショップAFEWと、同街を拠点とするフットボールクラブのフォルトゥナ・デュッセルドルフ(Dusseldorfer Turn- und Sportverein Fortuna)を迎えた異色のコラボ。AFEWの「地元を表現する1足を作りたい」という考えから、クラブカラーを用いた“スカイメダル TR”が誕生したそうだ。
第16弾
FUTUR
“WAVE EMPEROR FUTUR”
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パリ発ストリートブランド「フューチャー」は上級者ランナー向けのランニングシューズ“ウエーブエンペラー”をベースに、「セイハロー」に続いて2色のモデルを展開した。ベースとなるスニーカー選びだけでなく、カラー別に素材を変更し、ミズノが長年改良を続けてきたラスト(足型)をもとにフィット感を追求するなど、とにかくこだわりが凝縮されている。非常に歩きやすく個人的に愛用しているスニーカーの1つ。
第17弾
FOOTPATROL
“SKY MEDAL FOOTPATROL”
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ガスマスクのロゴで知られるロンドン発スニーカーショップの名店フットパトロールはこれまで、世界屈指のショップとして数多くのブランドとコラボを行ってきたが、ミズノとはこれが初めて。パープルとゴールドの組み合わせは、“スカイメダル TR”が生まれた1990年代のスポーツショップでよく見られたカラーリングをイメージ。素材も2つのスエードとメッシュを組み合わせることで当時のムードを再現している。
第18弾
ORIGINAL
“WAVE EMPEROR TECH”
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“ウエーブエンペラー”のシリーズ最新作“ウエーブエンペラー テック”が第18弾として登場。アッパーがリアルレザーとシンセティックスエード、網目の異なる2つのメッシュ生地という異なる素材を組み合わせたものだが、ブラックのワントーンで統一することでクリーンかつモードな表情を持つ一足になっている。さらに、夜間での視認性に配慮してミッドソールにはリフレクティブペイントが施され、シューレースにもリフレクター素材が用いられている。
第19弾
ORIGINAL
“MONDO CONTROL OG 1ST COLOR”
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1990年代に販売されていたランニングシューズ“モンド”シリーズの1つとして95年に登場した“モンドコントロール”をオリジナルカラーで復刻した。トレンドのボリュームあるソールながらどこかスマートさを感じさせるシルエットが特徴で、パープルをアクセントとしたカラーリングがレトロ感をさらに強調している。
第20弾
MITA SNEAKERS
“MONDO CONTROL MITA SNEAKERS”
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第20弾は初心に返り、第1弾でパートナーとして迎えたミタスニーカーズとの再コラボとなった。第19弾で復刻した“モンドコントロール”をベースに、サイドの“ランバード”を取り外して別カラーに変更できるベルクロ仕様とし、ミッドソールにはクッション性の高い最新のフォームを用いるなどして大幅にアップデートした。
第21弾
ORIGINAL
“MONDO CONTROL OG 2ND COLOR”
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「KAZOKU」ではさまざまな過去モデルが復刻されてきたが、第21弾では淡いグリーンのメッシュ素材とオレンジの“MIZUNO”ロゴが映える“モンドコントロール”のセカンドカラーが復刻された。当然、オリジナルのデザインを細部まで再現しながら機能面は大幅にアップデートしてよみがえっている。
以上全21モデルを紹介したが、デザインや機能性はもちろんのこと全てのモデルが2万円以下というお手頃プライスなのがうれしい。すでに「KAZOKU」に参加済みのいくつかのブランドやデザイナーたちは、インスタグラムにネクストスニーカーらしきものをたびたびチラ見せしており、今後もしばらくはミズノと「KAZOKU」の関係が続いていくようだ。