カニエ・ウェスト(Kanye West)は11月7日、米ビジネス誌「ファスト・カンパニー(Fast Company)」主催のイベント「ファスト・カンパニーズ・イノベーション・フェスティバル(Fast Company’s Innovation Festival)」にサプライズゲストとして登壇した。会場の最前列には、イベントが始まる直前に席に着いた妻のキム・カーダシアン(Kim Kardashian)の姿も見られた。
アディダス(ADIDAS)と手掛ける「イージー(YEEZY)」のスティーブン・スミス(Steven Smith)=フットウエアデザイナーと共に登場したカニエは、2024年の米大統領選挙に立候補する意向であることをあらためて表明した。カニエは以前からドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を支持していることを力説し、15年には20年の、18年には24年の米大統領選に出馬すると発言するなど、政界への関心をたびたび示してきた。このイベントでは、ほかにもヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)との友情やアディダスとの協業について、雇用や人種差別問題についてなど幅広く語っている。その中からいくつか興味深い発言を紹介する。
・ 「イージー」と雇用について
「『イージー』はアパレル業界のアップル(APPLE)社だ。今まで、アパレル業界にアップルのような会社はなかった。『イージー』は人生を“イージー(容易)”にしてくれる。俺は米国の雇用を拡大したい。手始めに『イージー』の本社をワイオミング州に移す。生産も米国内で行い、雇用を生み出す」
なお、カニエは9月にワイオミング州にある広さ1600ヘクタールの牧場を1400万ドル(約15億円)で購入している。また、「俺は『イージー』を100%所有している」という発言もあったが、これについてアディダスのコメントは得られなかった。
・ 子ども時代について
「母親は座り込みのデモをして、俺が6歳のときに逮捕された。父親はブラックパンサー党(1960~70年代に米国で黒人解放闘争を展開していた政治組織)の一員で、俺たちは教会で育った。16歳になって『ギャップ(GAP)』で販売員のアルバイトをしたが、万引きでクビになった。『アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)』は高くて買えなかったが、『ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)』なら買えた。TJマックス(TJ MAXX)などのオフプライスストアで売っていて安かったんだ」
・ 小売り環境の変化について
「『オールバーズ(ALLBIRDS)』の創業者らが買い物体験について語ったことに感銘を受けた。前回ニューヨークを訪れた際、妻と共にドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)に行ったし、ジュエラーの『ジェイコブ(JACOB & CO.)』にも行ったんだが、本当に素晴らしい体験だった。世の中はすっかりD2Cやオンラインショッピングに席巻されているが、実際の店舗に行き、誰かが美しく並べてくれた商品を見ると心が癒される。だから、ファッション業界にいる全員が重要なんだ。バイヤーも、買い物客も、そして販売員もね」
・ ヴァージル・アブローについて
「俺とヴァージルは、服に関する意見を述べる機会がほしいと思っていた。アメリカの黒人デザイナーは意見に耳を傾けてもらえない。黒人は消費者にしかなれないというわけだ。会社の取締役会に顔を出すようになって知ったが、偉いやつらは俺たちを“黒人層”という枠に押し込めてしまう。ヴァージルはアフリカにルーツを持っている。俺とヴァージルは肌の色に左右されずに行動する」
・ ほかのデザイナーについて
「『バレンシアガ(BALENCIAGA)』を率いるデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)と俺は、同じスピリットを持っている。だから、どっちが早くこのアイデアを具体化して世の中に出せるか、という感じなんだ」
・ 「フォーブス(FORBES)」誌が毎年発表している「世界長者番付」にランクインしなかったことについて
「発表後に『フォーブス』の連中と会ったときに8億9000万ドル(約961億円)の領収書を見せたが、それでも俺が億万長者だと認めなかった。自分を億万長者だと称するのは品がないとみんな言うが、構うものか。俺が実際にそうなんだと伝わるまで、1年ぐらい名前を“クリスチャン・ジーニアス(天才)・ビリオネア(億万長者)・カニエ・ウェスト”に変えてやろうかと思う」
なお、「フォーブス」誌はこの発言を受けて、「当誌の調べでは、『世界長者番付』の準備をしていた19年初めの段階でカニエ・ウェストの資産は2億4000万ドル(約259億円)程度だったためランクインしていない。やや低めに見積もっているが、それはどの候補者に対しても同様だ。その後、8月号の巻頭特集のためにカニエにインタビューをしているが、そのような領収書は見ていないし、その領収書だけでは億万長者と認めることはできない」とする記事を掲載している。
・ 人種差別とアディダスについて
「黒人に対して言いたいのは、『黒人という枠に押し込められるな』ということだ。個人のパワーを自覚してほしい。(一般に多くの黒人が支持するとされる)民主党に投票するだけではパワーを行使したことにならない。それは言われたことをやっているだけだ。俺はアディダスが理不尽なことを言ってきた際に、弁護士に相談した。そして大人らしくトレンチコートを着て、『工場をアメリカに移す。これは決定事項だ』とアディダスに言ってやったんだ。これがパワーだ。ちなみに、その後は良好な関係が続いているよ」
・ 宗教について
「人間は神が創ったiPhoneだ。神が創った機械だ」
・ 将来について
「俺は何かを願ったりしない。行動あるのみ」