ファッション

よく観られたパリコレ動画 Part2  ロエベ、ステラ、ドリス、サンローラン

 2020年春夏パリコレ中に自分で撮影・掲載した55本の動画の中からアクセス数が良かった14本を2回に分けて発表します。Part2は王道パリブランドが並びます。最近、ランウェイ取材でノートとボールペンはほぼ使いません。iPhoneにメモをとり、写真を撮りつつ気になるシーンが来たら動画へスイッチ。音楽にピンと来たらShazam。デバイスを複数持っていても使えるのは結局何かひとつなので「その時、iPhoneをどこに向けるのか」を瞬時に判断するのが短いショーから多くの情報を得る秘訣です。

「ロエベ」が
“オールド「セリーヌ」”の
ポジションへ

 「ロエベ(LOEWE)」がじんわりよいショーを見せてくれました。「ロエベ」のショーはいつもじんわりよいのですが、今回はじんわり~~~とより滋味深い。ミラノサローネなどで発表したクラフトワークからデザインを発展させるのが、最近のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のストーリーの作り方。レザー使いはもちろんのこと、売れているカゴバッグも原点は、工芸品としてのカゴでした。今回は布のクラフトであるレースにフォーカス。スイスなどのレースから広げモダナイズしています。服の向こうに世界中の名もなき人たちの知恵と生活が透けて見えるようで素敵です。オートクチュールを持たないラグジュアリーメゾンの生きる道を切り開いていますね。

ちょっとエッチな
「ステラ マッカートニー」

 「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」は、“これまでで一番サステイナブルなコレクション”だそう。であれば素材手配・開発の背景などには多くの研究、議論、投資などがあるはずですが、ショーからはストイックさや生真面目さは微塵も感じさせず。サークルモチーフのカラフルなドレスは単純にカワイイ。それこそが「ステラ」ですね。

 で、さらにそこを盛り上げたのが、ウィットの効いた演出です。350年の歴史を持つオペラ座の壁一面に交尾をする動物たちの動画を投影しました。私の席の前ではアルマジロの雄が雌が……、来場していたヴィヴィアン・ウエストウッド(Dame Vivienne Westwood)の背後ではクマやシマウマが……。自宅で飼っているカメの雄と雌も夏になるといつもこうだったな、と思い出したりして。そう、これは自然界でごく普通の風景。動物愛護や自然保護を訴えるステラ流のウィットの効いた演出にニヤニヤしてしまいます。ぜひ上の動画で見てください。

「ドリス ヴァン ノッテン」の
コラボ相手は……

 ランウェイの作り方にもトレンドがあり、最近はフラット&自然光が主流です。だから「ドリス ヴァン ノッテン」が今回採用した、客席からモデルを仰ぎ見る高いランウェイは、ザ・ファッションショー&90年代的であり、久しぶりです。

 そしてドリスが協業のために迎えたのはなんと、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)でした。フィナーレに2人が登場した時には、意外な組み合わせに思わず「え!」と声を上げましたが、10秒後には「なるほど!」と納得。プリントや刺しゅうを得意とするドリスの感性に、同じく色彩使いが巧みなラクロワの感性が重なるという、いわば職人と職人の協業は、見事なハーモニーを奏でていまいた。いわば、井上陽水と玉置浩二の「夏の終わりのハーモニー」的な?デヴィッド・ボウイ(David Bowie)とビング・クロスビー(Bing Crosby)のクリスマスソング的な?というのは冗談ですが、王道なファッションショーを通じて美しい服をきちんと見せようというドリスの意思が伝わってきます。ジャカードやプリントで色柄を大胆に合わせた美しい服をぜひ動画でどうぞ。

エッフェル塔と「サンローラン」は
2つでひとつ

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」にとってエッフェル塔は、いなくてはならないパートナーみたいなものではないでしょうか。エッフェル塔は毎時0分になるとダイヤモンドのごとくキラキラと光るのですが、最近の「サンローラン」は20時のキラキラとともにショーをスタートします。加えて今回は約400個の照明が夜空に向かって光を放ち、その間をモデルがウォーキングする豪快な演出で、マラケシュとLAの2つのカルチャーを感じるコレクションを盛り上げました。会場は、オープンな作りのため、観光客が周囲に集まりフェス的な様相に。。

「アンリアレイジ」が世界共通の
知的な(笑)を引き出す

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は、先シーズンに引き続き今季も“言葉での説明はほぼ不要”な、わかりやすい演出のショーを行いました。3人が同時に歩いてくるモデルの服は、同じアイテムだけど、微妙に形が違います。そこから“最近は写真の影響力が大きいよね、でも写真に納まる服ってカメラのアングルによって形の見え方異なるよね(笑)”というデザイナーの視点を伝えています。そして観客はショーを見て“確かに(笑)”と思います。ポイントは最後の(笑)の存在であり、風刺が効いているから、その場にいるいろいろな国から来た人たちに共通の(笑)が生まれています。

「ノワール」で魂がプルプル震える

 「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」の二宮啓さんは底知れない。会えばひょうひょうとしているけれど、作り出す服はこれですよ!穏やかな人柄と作り出す服のコントラストが鮮やかすぎて底知れない。テーマとかストーリーとか戦略とか、そんなものは〇〇くらえ。手を動かし、美しいと思う形を作り出すだけ。なんて、本人は言わないけれど、そこを歩いているモノが二宮さんのソウルであることはわかります。東信さんによるヘッドピースに今回は苔を使っていることは、バックステージで確認しました。

女性デザイナーらしいリアルな
「シャネル」

 「シャネル(CHANEL)」は、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)による初のレディ・トゥ・ウエアのコレクションでした。大掛かりなセットはカンボン通りの「シャネル」のアトリエから見える屋根の上の風景だそう。ヴィルジニーになり、路線ががらりと変わった訳ではなく「シャネル」はどこまでも「シャネル」ですが、これまでより少しリラックスしていてリアル。だからか、モデル自身の個性が見えてきます。ポケットに手を突っ込んで歩くウォーキングが象徴的です。

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