主要百貨店の2020年の福袋商戦は、ECへの移行、インバウンド需要の減少により前年並み、もしくは前年実績を下回る結果が目立った。伊勢丹新宿本店と東武百貨店池袋店、あべのハルカス近鉄本店の正月三が日の売れ筋動向を調査した。
昨秋、大規模なリモデルにより化粧品フロアを1、2階に増床し、売り場面積が約1.5倍となった伊勢丹新宿本店では、福袋の取り扱いブランド数が前年の15ブランドから5ブランドと大幅に縮小し、今年は「アユーラ(AYURA)」とフレグランス4ブランドの福袋を販売した。同店では地下2階の、世界各地のオーガニック・ナチュラルコスメやフードを取り扱うビューティアポセカリーの福袋販売を、18年からECサイトに移行している。昨年2月には化粧品専門のECサイト「ミーコ(MEECO)」を開設しており、今年の福袋販売はビューティアポセカリーだけでなく多くの化粧品ブランドをECに移行した。EC強化は「新春の店頭混雑緩和と、来店が困難なお客さまを含めて利便性を向上させる目的」(岡部麻衣・三越伊勢丹 化粧品MD統括部 化粧品営業部 新宿化粧品マーチャンダイザー)で実施した。好調ブランドはフレグランスブランドの「フローリス(FLORIS)」や「パルファン・ロジーヌ パリ(LES PARFUMS DE ROSINE PARIS)」のほか、「ジバンシイ(GIVENCHY)」などの化粧品ブランドの初売り限定商品や初売り限定のセット販売なども好調に推移した。一方のECサイト「ミーコ」では、福袋の取り扱いブランド数は前年の50ブランドから62ブランドに増え、売り上げも前年同期比40%増と大きく伸長した。「例年同様、価値がストレートに感じられる、お買い得感が強いものへの関心が高かった」(松井朋隆・三越伊勢丹 化粧品MD統括部 meeco担当 スタッフマネージャー)。
東武百貨店池袋店の店頭では16ブランドの福袋を販売し、売り上げは同20%減だった。その要因は「販売総数が昨年より約200個減ったことと、インバウンド需要が減退したブランドが複数見られたこと」(佐藤英美・東武百貨店 池袋店 婦人服飾雑貨・特選部 自主運営第一課 マネージャー)が挙げられる。そんな中でも好調だったのは、「ジバンシイ」の1万円の福袋21個が約30秒で完売したほか、「シュウ ウエムラ」は1万2000円の福袋を162個用意し、約20分で整理券の配布を終了するほどの盛況ぶりだった。好調ブランドの特徴は「スキンケアからメイクアップまで幅広いアイテムをそろえていた」点で、全体としては「訪日外国人に人気の一部のブランドを除き、並んでいるお客さまのほとんどが日本人だった」。
ブランド別では「シュウ ウエムラ」が人気
大阪・阿倍野区にある近鉄百貨店の旗艦店、あべのハルカス近鉄本店も、昨年9月に化粧品売り場を約1.2倍に拡大してリニューアルオープンした。福袋は取り扱いブランド数が昨年の19ブランドから22ブランドに増えたことから、売り上げは同約30%増と伸長した。中でも「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」と「アユーラ」は、開店前の整理券配布開始から30分で配布終了となるなど人気が高かった。「福袋のお買い上げは国内のお客さまが中心」(柏原千尋・近鉄百貨店広報担当)だった。
福袋は、中身を吟味して納得感がある商品を購入する傾向が年々強まっている。事前情報をつかんで目的買いする人が増えると同時に、初売り自体をイベントとして楽しみながら買い回りをする人が増えたといった声も聞かれる。新たな潮流としては、これまで中国人が圧倒的多数だった訪日外国人が、アラブ系やインドネシア、ベトナムなどからの来店客の割合が増えているという。多様化するニーズにどう対応していくかが今後の課題となりそうだ。