「ディオール(DIOR)」2020年春夏コレクションの着想源となったのは、ムッシュ・ディオールの妹であるカトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)の写真だ。マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuli)=アーティスティック・ディレクターは、庭師でもあったカトリーヌが手入れをしていた庭園の植物やそこに生息する生物からイメージを膨らませた。また、会場セットも園地栽培に取り組むアーティスト集団のアトリエ コロコとの協業。テントの中に原産地が異なる木々を配し、森を再現した。そんな自然に溢れるムードはアクセサリーでも顕著で、草花モチーフや天然素材、優しい色使い、ガーデニングを想起させる要素が散りばめられた。
バッグで目を引いたのは、繊細な草花の刺しゅうが施された“サドルバッグ”や“ブック トート”。ガーデニング用のツールバッグ風を思わせるビッグトートは、性別を問わず支持を集めそうだ。また、メゾンを象徴するデザインの再解釈として、キャンバス地に“カナージュ”パターンを取り入れたアイテムも新登場。“レディ ディオール”(予定価格48万円)と“ブック トート”(同28万5000円)で提案する。それだけでなく、“ブック トート”のバリエーションは、トワルドジュイやストライプ、千鳥格子、淡いカラーグラデーションといったウエアに呼応する柄のファブリックや単色のレザーなど今季も豊富。フロントを飾る「C」と「D」の大きな金具が特徴の“トロント モンテーニュ”ラインのバッグやレザー小物も、種類が増えつつある。
シューズの中心となるのは、ジュート(黄麻)を用いたエスパドリーユやサンダルといったエフォートレスなアイテム。タッセル付きのロープのようなストラップを足首に巻くスタイルが印象的だ。その他のデザインでもフラットソールもしくはローヒールのアイテムが多く、ガーデニングやアウトドアのイメージにつながるラバーブーツやレースアップブーツもある。ブーツに施されたカットアウトは、20年クルーズ・コレクションのブーツに見られたフィッシュネットのデザインを発展させたものだ。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。