オークションハウスのサザビーズ(SOTHEBY’S)から派生したジュエリーブランド「サザビーズ ダイヤモンド(SOTHEBY’S DIAMOND)」のパティ・ウォン(Patti Wong)=サザビーズ・アジア会長兼サザビーズ ダイヤモンド部門会長が年末、顧客イベントのために来日した。ジュエリーブランドを立ち上げたきっかけやブランドの特徴などについてウォン会長に話を聞いた。
WWD:サザビーズはオークションハウスだが、「サザビーズ ダイヤモンド」を立ち上げた理由と目的は?
パティ・ウォン=サザビーズ・アジア会長兼サザビーズ ダイヤモンド部門会長(以下、ウォン):年間のオークションスケジュールは、12のジュエリーオークションと数十のオンライン販売から構成されている。当初は、オークション以外でVIP顧客にダイヤモンドを提供していたが、多くの顧客から継続的なサービスをリクエストされて、これらの顧客は年間を通してジュエリーを必要としていると感じた。「サザビーズ ダイヤモンド」は、オークションが開催されないときにこれらの顧客のニーズに応えている。顧客はわれわれの専門性や素材調達を信頼してくれているので、世界的なダイヤモンドのトップサプライヤーである、ディアコア(DIACORE)とジョイントベンチャーでブランドを立ち上げた。「サザビーズ ダイヤモンド」は伝統的なジュエリーオークションのバイヤーやサザビーズを信頼してくれている他分野のコレクターの間でも関心が高い。
WWD:「サザビーズ ダイヤモンド」のブランド哲学は?他のジュエラーと違う点は?
ウォン:「サザビーズ ダイヤモンド」はダイヤモンドのブランドで、全体の約9割がダイヤモンドだが、顧客のために他の宝石も調達することがある。ディアコアからダイヤモンド一つ一つを調達してその石に合ったデザインをする。この点が、デザインを起点に宝石を探すブランドと違う。また、予算を決めていないため、最も調達が難しい分野の石も購入することができる。
WWD:ビスポーク、シグニチャー、コラボレーションと3つのラインがあるが、それぞれの売り上げの割合は?
ウォン:売り上げはライン別には出さない。顧客はこれら全てに使用されているダイヤモンドの質に満足しているので、シグニチャー、コラボレーションなど全てのラインから購入する。1石の裸石を購入してわれわれのゲストデザイナーにビスポークジュエリーをデザインしてもらう顧客もいる。
WWD:「サザビーズ ダイヤモンド」のエントリー価格と中心価格帯は?
ウォン:われわれのジュエリーは全て一点ものなので、エントリー価格は約15万ドル(約1635万円)。若い顧客向けに幅を広げて約5万ドル(約545万円からソリテール(1石)のジュエリーを提供している。
WWD:実際の客層は?顧客獲得のためにしていることは?
ウォン:「サザビーズ ダイヤモンド」を立ち上げた当初は、オークションの顧客やジュエリーのバイヤー、それ以外のカテゴリーのコレクター向けに販売していた。現在はロンドンのボンドストリートにサロンがあるので、オークションハウスとしてのサザビーズやブランドを知らなかったバイヤーからも注目されるようになった。
WWD:ロンドン、香港、ニューヨークにサロンがあるようだが、どこの売り上げが大きいか?
ウォン:ニューヨーク、ロンドン、香港にある3つのサロンのほか、東京や大阪で開催したようなポップアップショップを行っている。顧客はとてもグローバルでそれら2カ所以上から購入する。ロンドンに旅行中に見たアイテムを自宅のあるニューヨークか別の場所で購入するといったケースもある。
WWD:オークション用に調達した石を使用することはあるか?
ウォン:ない。
WWD:コラボレーションするデザイナーはどのような基準で選ぶか?専属のデザイナーは何人いるか?
ウォン:デザイナー選びはとても慎重に行う。われわれのDNAを共有しつつも、ユニークな何かを表現できることが重要だ。同時に2~3人の若いデザイナーと協業することもある。
WWD:製造はどこで行っているか?平均的な納期は?
ウォン:生産はニューヨークのアトリエで優秀な職人によって行われる。「サザビーズ ダイヤモンド」の全てのジュエリーは一点もので、白紙の状態からデザインするものばかりだ。デザインから完成まで6カ月、調達が困難な素材やカットが難しい石などの場合は1年かかることもある。
WWD:合成ダイヤモンドに対する見解は?
パティ:天然ダイヤモンドの市場がある限り、合成ダイヤモンドの市場はあるはずだ。ただ、合成が天然の代わりになるわけではなく、全く異なる市場になる。「デビアス(DE BEERS)」は合成ダイヤモンドを生産する技術を開発し、マスマーケット用に安価な合成ダイヤモンドを生産している。