1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。
今日のニュース:P.7『「グッチ」が模倣品を売る闇サイト30社を提訴』
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読み解きポイント:「真似た利益と真似るリスク、どちらが大きい?」
ニュースのポイント
「グッチ(GUCCI)」はシューズ、アクセサリー、ウエアなどの模倣品を販売したとして30以上のウェブサイトに損害賠償を求めフロリダ州連邦裁判所に提訴した。複数の商標権侵害で被告らを訴えており、模倣品の販売中止なども要求している。「グッチ」は模倣品が販売されることで潜在顧客を奪っていると主張し、さらに対策に「多大な金銭的リソース」を割いているとして、実際に売れた模倣品1点につき200万ドル(約2億1800万円)の損害賠償を求めた。
Azuはこう読む!
やってきました2020!2020年から始まるこの10年を20年代と数えるならば、90年代生まれの私は3つ前の世代です。ここに「もう」とつけるかどうかで、世代論だけでは語れない「意志」が見えてくるのではと思っています。私は、特定の言葉に対して「もう」も「なのに」も、使うのをやめました。20年代もずっとファッションを楽しめますように!
さてさて、この話題、金額だけ見たら震え上がって絶対に模倣品の販売なんてしないぞ、と思いますよね。だって仮に「グッチ」側の主張が認められたら、実際に売れた模倣品1点につき約2億1800万円の損害賠償が請求されるんですよ……。もちろん数点しか売れてないなんてことはないでしょうから、仮に10点売れたとして、21億8000万円!?どう考えても模倣品を売って得た利益なんて吹っ飛ぶ額です。
模倣品の問題はラグジュアリーブランドに限ったことではありません。おそらく街中へ買い物に出れば必ずどこかで出合っているでしょう。私が「アパレルの模倣品」に気がついたのは小学校高学年の時でした。当時大流行していたキッズブランドが大好きだった私は、カタログや雑誌、お店に並ぶ商品を穴があくほど見ていたので多くのアイテムのデザインが頭に入っていました(私が洋服・ファッションを好きになった原点です)。ある時地元のスーパーで遊んでいたら、子ども服売り場に見覚えのあるキャラクターが描かれたTシャツがマネキンに着せられていました。それが、大好きなブランドの模倣品だったのです。
幼いながらも「これはいけないことだ」と気付き、タグを見て、家に帰ってカタログと見比べました。今思うとおそらく模倣品として訴えることができるかどうかギリギリなくらいの「編集アイテム」だったと思いますが、とはいえ大好きなブランドが真似されて売られていたことに衝撃を受けたことを覚えています。
10年代はSNSが急速に普及し、誰もが発信者になれる時代になりました。そして誰もが摘発者になれる時代です。ファッションの模倣品摘発で有名なのはInstagramの「ダイエット プラダ(@diet_prada)」ですが、つい最近も一般の方による模倣品の摘発ツイートがプチバズを起こしていました。そして私も別件で、摘発しようという魂胆はなかったのに思いがけずプチバズってしまったのですが、それくらい模倣品に対する目が厳しくなっているということです。
リツイート先を見ると、「本家を買おうと思っていたのにパクられたから買う気をなくした」という声が3、4つほどあり(この数を多いとみるか少ないとみるかはお任せしますが)、「グッチ」が言うように模倣品が「潜在顧客を奪っている」というのは事実。私がそれとなくツイートしてしまった件は「卸や大手セレクトショップとのコラボもしているし、ある程度そのブランドのデザインだとは認知されているが規模は大きくないブランド」が「超大手」に1/5の価格でほぼ全く同じデザインのアイテムを出されてしまった件です。大手メディアには「トレンド感満載のデザインで高見え!『ゾゾタウン(ZOZOTOWN)』でランキング上位なのに『ジーユー(GU)』で買えるなんて最高!」と書かれたり、友人からは「地方の友達がこぞって買ってインスタにあげてる」という報告も受けたり、規模と価格の勝利を感じてしまったのでした。
私には法的判断はできないため模倣品かどうかはプロに委ねますが、模倣品の摘発が起こるたびにいつも気になるのは「消費者側のリテラシー」です。もちろん私も全ての「元ネタ」を把握しているわけではないので知らぬ間に模倣品を手にしているかもしれませんが、完全な模倣品だと知っていて手を出すのは如何なものかな、と思ってしまうのです。
「別に安く買えればいいじゃん」「質が落ちてもいいから安い方が良い」という声がたくさん聞こえてくるけれど、それは「形のないものを盗んだ」という事実を遠くから肯定していることになります。デザインや言葉など、無形のものは軽んじて見られますが、それがカタチになるまでには膨大な思考・制作時間と、その思考そのものを生み出す努力があるのです。「トレンド」「ビジネスだから」という魔法の言葉で片付けられる問題ではないことを、消費者ももっと意識すべきだと思います。そうでないとどんどん模倣品が肯定されてしまう。
「グッチ」は大きな企業なので対抗措置に出ることができますが、小さなブランドが巨大資本に飲み込まれたらひとたまりもありません。もちろん小さいからといって「バレないだろう」「みんなやってるから」とデザインを盗用するのはダメです。アパレルやコスメブランドを作りやすくなったこの時代だからこそ、色々な利害が絡むビジネスサイドではなく消費者側が声をあげて、自分が好きなブランドを守っていく必要がありそうです。
Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne