「ポール・スミス(PAUL SMITH)」を擁するポール・スミス・グループ・ホールディングス(PAUL SMITH GROUP HOLDINGS)の2019年6月通期決算は、売上高が前期比8.9%増の2億1490万ポンド(約305億円)、営業利益が同71.9%増の573万ポンド(約8億1366万円)、純利益が同90.0%増の368万ポンド(約5億2256万円)と増収増益だった。
本拠地のイギリスはブレグジット(イギリスのEU離脱問題)に揺れており、フランスでは政府への激しい抗議行動の影響で一時的に店舗を閉鎖する事態になるなど、さまざまな政情不安のために客足が落ちていた。しかし経営を引き締め、システムや物流倉庫を統合して費用を抑える一方で、オムニチャネルへの投資や新規店オープンなどの成長戦略が業績拡大につながった。19年はロンドンに2店をオープンしたほか、デンマークとドイツに売り場を1カ所ずつ増やし、米カリフォルニアにアウトレットを開店している。なお大幅な増益には、18年度に219万ポンド(約3億1098万円)計上していた特別損失が、19年度には97万ポンド(約1億3774万円)に半減したことも寄与した。その内訳は組織再編や減損処理にかかった費用などだ。
業態別に見ると、小売りの売上高は同14%増、既存店ベースでは同6%増だった。またフランチャイズパートナーや百貨店、複数ブランドを取り扱う小売店、オンラインの小売業者などへの卸は同4.8%増で8000万ポンド(約113億円)に迫る勢いだった。ECも非常に好調で同12%増となり、小売りの24%を占めている。一方で、香水やアイウエアなどのライセンス事業はほぼ横ばいの2150万ポンド(約30億円)だった。
こうした好調ぶりは20年度も継続しており、20年春夏コレクションの先行予約は前シーズンと比べて10%程度アップしているという。同社は、「18年は大きな苦難に直面した、変化と移行の年だった。19年の業績には非常に満足している」とコメントした。