1月11日、土曜日。晴れ。最高気温は10度。さぁ、ミラノメンズは今日からが本番!そしていきなり、展示会だらけで一番忙しい1日の始まりです。今回の出張は、毎朝6時に起きて、カラダを1時間動かすのが日課。今日はバーベルを担ぎながらのスクワットで足腰を鍛えました。たくさん歩けそうな予感です(笑)。
10:15 「ヌメロ ヴェントゥーノ」
最初は「ヌメロ ヴェントゥーノ(N 21)」。前回は男女合同ショーでしたが、今回はメンズだけを単独で。2020-21年秋冬は、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「トム ブラウン(THOM BROWNE)」が男女合同ショーを開くためメンズのファッションウイークを離れましたが、一方で「ヌメロ ヴェントゥーノ」や「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」はメンズの単独ショーを再開。各ブランドが理想の発表方法を模索する動きは、まだしばらく続きそうです。
コレクションは、アレッサンドロ・デラクア(Alessandro dell'Acqua)らしさがいっぱい。色はもちろん、背中が全開ゆえ2重の意味で「ヌード」なニット、レースのTシャツ、モヘアのニットにオーバーサイズのブルゾンやAラインのステンカラーコート。シャツの襟は、まるでブラウスのボウタイ(リボン)のよう。今期もジェンダーの狭間を揺れ動きます。拡大ロゴのトレンチコート、カワイイぞ!
11:25 エンポリオ アルマーニ
「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」は、ランウエイも洋服もピカピカです。ランウエイはピカピカの鏡面(この手のランウエイは、モデルもゲストもミニスカートの時はご用心ですw)。洋服は、クリスタルスタッズを打ち込んだり、ベルベットにラメスプレーを吹きつけたり、メタルヤーンを混紡したり、ごくごく薄いラミネート加工を施したり。壁面のサイネージ、ワイヤーで吊るされた無人のカメラに囲まれた空間は、未来都市のようでもあります。でも、ただのフューチャリスティックじゃない。素材はヘリンボーンのツイードウールやモヘア、ベルベットなど、むしろクラシック。伝統的な素材を加工や装飾で未来に継承するかのようです。さすが、昔を知り、未来を見据える御大であります。
終盤は、リサイクル素材で作る新ライン「R-EA」のお披露目でした。たしかに素材からはリサイクル感、ちょっとゴワついていそうだったり、発色が完璧じゃなかったりの弱点を感じますが、それを逆手にとってストリートテイストのカーゴパンツやブルゾン、オーバーサイズのコートを提案します。モードなサステイナブル、ストリートなサステイナブル。別にサステイナブルは、ナチュラルやエコテイストじゃなくても良いワケですからね。共感する人も多いのではないでしょうか?
11:50 ザネラート
バッグの「ザネラート(ZANELLATO)は、異素材コンビの新作がズラリ。定番“ポスティーナ”にも、ナイロンの本体にレザーの外付けポケットです。コレはなかなかユニークで可愛らしい!カスタマイズ企画は今後、日本でも売り場を巡回するそう。いろんな色で、文字をバッグに圧着できます。
12:20 ジミー チュウ
イースト・ミーツ・ウエストの「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」が思い描く理想の男性は、ブルース・リー(Bruce Lee)です。アチョー!ということで目玉は、シルクジャカードでエレガントなカンフーシューズ。靴底はしっかりキルティングで、歩きやすさも保証します。
ドレスシューズには、スタースタッズやスターチェーンのみならず、いよいよジュエリー、タイガーアイまで付いちゃうくらいゴージャス!全面クリスタルのスニーカーは40万円くらいだけど、「案外売れちゃう」のだそうです。彦摩呂にぜひ、「靴業界の宝石箱や~」と叫んでいただきたい。良き目の保養になりました。
12:40 ジュゼッペ ザノッティ
と思っていたら、「ジミー チュウ」に宣戦布告するかのように、負けず劣らずピッカピカのシューズブランドが!!「ジュゼッペ ザノッティ(GIUSEPPE ZANOTTI)」です。全面スワロフスキーやエナメル加工のイヴニングは、スクエアトー。そこにクリスタルを「これでもか!」というくらいのっけます。しかもゼブラ柄とかですからね(笑)。バッシュにインスピレーション得た“タロン”も七色に輝いておりました。
13:15 フィリップモデル
「フィリップモデル(PHILIPPE MODEL)」も負けてません。すごいカラー、そして素材のブロッキング。同じスニーカーでも素材の使い方で4万~8万円台までバリエーションに富んでいるスニーカーブランド。ランニングスニーカーはコンテンポラリーに進化しています。
14:20 ドルチェ&ガッバーナ
「ドルチェ&ガッバーナ (DOLCE&GABBANA)」はデジタル全盛期だからこそ、手仕事の温もりフォーカス。ショー会場では、ざっくりニットを手編みするマンマのような女性職人、時計やジュエリーの彫金師(このブランドは、自社で彫金師を抱えています)が、ご自慢の手仕事を披露。コレクションは、そんな職人技の集大成です。
1つのキーアイテムは、超巨大なローゲージニット。マフラーからガウンコートまで、マンマ、多分総動員です(笑)。ゴートファーのコートから着古した下着のようにクタクタなインナーニットまで、1990年代の「ドルチェ&ガッバーナ」メンズを彷彿とさせる、ナツいスタイルが次から次へと現れます。昨日の「ディースクエアード」同様、90年代から21世紀初頭ごろファッションにどっぷり浸かったアラフォーには、楽しいシーズンがやって来そうです。
15:20 マルニ
さぁ、本日一番の難問でした(笑)。「マルニ(MARNI)」です。オールスタンディング、全員立ち見のショーは、パフォーマーがモデル代わり。レーザー光線が降り注ぐ光の中で抱き合っていたかと思うと、徐々に体を揺らし、歩き出し、通り過ぎる人を睨みつけ、最後は高速ウォーキングでバックステージに戻ります。
洋服は、水玉やストライプが踊る、レトロな原色のニットやシャツ、それにパンツ。相変わらずチグハグなサイズ感で、スーパーオーバーサイズとピタピタが同居します。そこにオプアート、水玉やストライプなどの単純な模様を連続させることで視覚を混乱させるアートのようなモチーフがどっさり。フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の「マルニ」らしさ全開です。
にしてもアレ、なんだったのだろう(笑)?どこかで「リッソって、宇宙人みたい。地球人として地球を『中』から見ているんじゃなくて、宇宙人として『外』から見ているカンジ」と思っている僕には、「世紀末」とか「終わりの始まり」、反対に「新しい時代」なんてフレーズが頭に浮かんできました。さて、彼の心の内は?明日の展示会で聞いてみようと思います。
17:20 ニール バレット
お次は、16時スタート予定の「ニール バレット(NEIL BARRETT)」と思ったら、17時スタートでした。なんたる凡ミス。これまでずっと初日の16時、「マルニ」の後だったから無意識にシャトルバスに乗ってしまいましたが、ミラノメンズを抜けた「ヴェルサーチェ」の時間にスライドしていたとは……。これで16~19時の「ラルフ ローレン パープル レーベル(RALPH LAUREN PURPLE LABEL)」は、難しいコトに(がっくり)。「ラルフ」は後輩オーツカに任せて、「ニール」の場所で原稿書きに勤しみます。
肝心のコレクションは、漆黒のセットアップやバッファローレザーのライダースなどモードなイメージの「ニール バレット」が真逆のアウトドアテイストを加えたり、デニムパンツにはレザーをハイブリッドしたり。スタイルから商品に至るまで、真逆のテイストをガンガン組み合わせます。パンパンに膨らんだダウンブルゾンやノルディック柄のソックス、デザートブーツで“ほっこり”ムードさえ漂うモード。肩の力が程よく抜けたカンジ、良きです。
18:20 マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン
さぁ、本日のラストショーは、「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)。会場には、中央に大きなボール。そして壁と床は一面、千鳥格子に似た「マルセロ」のモチーフです。
コレクションは、このモチーフが、やっぱりオプアートのようにてんこ盛り。今日はピカピカだったり、チカチカだったり、目に刺激が走った一日だったなぁ。老眼の気配を感じるアラフォーには、正直ちょっと負担が大きめ。会食の後ホテルに戻ったら、蒸気が出るアイマスクで目を労わろうと思います(笑)。