高級ブランドのECサイト「ファーフェッチ(FARFETCH)」を親会社に持つニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP以下、NGG)が、セレクトショップ兼ブランド「オープニングセレモニー」(OPENING CEREMONY以下、OC)の商標と知的財産を取得した。「OC」のオリジナルブランド事業の獲得が狙いと見られている。
NGGは2015年にミラノで設立。マルセロ・ブロン(Marcelo Burlon)と、人気セレクトショップのアントニオーリ(ANTONIOLI)を運営するクラウディオ・アントニオーリ(Claudio Antonioli)、ミラノ発のカジュアルブランド「ヴィンテージ55(VINTAGE 55)」の創業者ダヴィデ・デ・ジリオ(Davide De Giglio)の3人が共同出資している。同社はヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」や、「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」などを擁するが、19年8月に「ファーフェッチ」によって6億7500万ドル(約735億円)で買収された。
「OC」は02年にウンベルト・レオン(Humberto Leon)とキャロル・リム(Carol Lim)がニューヨークで設立。オリジナルブランドに加えて、新進気鋭のブランドを取り扱うことで知られている。コラボレーションにも積極的で、クロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)や水原希子、NBAのスター選手ラッセル・ウェストブルック(Russell Westbrook)、ディズニー(DISNEY)、アウトドアブランド「コロンビア(COLUMBIA)」など多くのブランドや著名人と提携してきた。事業面に目を向けると、「OC」は14年に米投資会社バークシャー・パートナーズ(BERKSHIRE PARTNERS)に少数株式を売却しているが、19年にそれを買い戻し、新たな投資家を探していた。また18年には、デザインスタッフを含む23人の従業員を解雇している。店舗をニューヨークに2店、ロサンゼルスと東京に1店ずつ構えているが、表参道店を1月28日に閉じることを発表したばかりだ。ECも展開しているが、日本のオンラインショップは2月23日をもって終了する。ほかには卸のショールームを運営している。共同創業者であるレオンとリムは12年から「ケンゾー(KENZO)」のクリエイティブ・ディレクターも務めていたが、「OC」に専念するため19年7月に退任した。なお、両氏はNGGによるテコ入れ後も「OC」の共同クリエイティブ・ディレクターとして残るものと見られている。
今回の取得について、「ファーフェッチ」および「OC」からのコメントは得られなかった。「ファーフェッチ」は高級ブランドを扱うECプラットフォームとして確固たる地位を築いているが、「オフ-ホワイト」などを擁するNGGを買収していることから、自社ブランドを作りたいのではないかと見る向きも多い。実際、NGGを獲得した狙いについてジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)=ファーフェッチ創業者兼最高経営責任者は、「ネットフリックス(NETFLIX)を例に取ると、当初は自社以外のコンテンツを配信するプラットフォームだったが、現在はオリジナルコンテンツに注力している。われわれも同様だ。今後はオリジナルブランドの開発にも力を入れていく」と語っている。「OC」の商標と知的財産権を取得した今回の動きは、その流れに沿ったものといえるだろう。