右肩上がりの化粧品市場。百貨店をはじめ、小売店はどこも活況を呈している。好調の要因はさまざまにあるが、テクノロジーを駆使した新しい製品提案や、世界観を打ち出す施策、デジタルとの相性、さらにキモとなっているのは「肌に触れる」接客へのこだわりが、売り上げも押し上げている。混雑が進むと店頭の清潔感が失われたり、根幹の接客もままならなくなっているのではないか?こんな思いもよぎり、好調の化粧品ブランドの店頭を覆面調査員がチェック。
記念すべき第1回は、2019年にこれまで1階で展開していた化粧品を2階にまで広げた伊勢丹新宿本店をピックアップ。調査員は40代と20代の2人の女性。年代が違う2人がリニューアルした同店をどう見たのかーー。
調査員A:記念すべき初回は伊勢丹! 段階を経てようやく完成したビューティフロアですね。他店のバイヤーをはじめ、美容関係者も偵察していて、いろいろなところで話題になっています。
調査員B:美容業界の人だけでなく、同世代の友人たちやSNSを見ていても、注目している人が多い印象でした。
調査員A:伊勢丹のビューティフロアを語るのに避けて通れないのは、2フロアにしたこと。同じブランドをスキンケア(2階)とメイク(1階)に分けたことでしょ。1階だけでは絶対的にスペースが足りず、新規ブランドも入れない状態だったし。確かに世界の伊勢丹と呼ばれているのに受け入れができないというのは致命的だったと思う。だから1階以外にもフロアを設けることは致し方ないと感じるけど……。スキンケアとメイクで分けるとは思わなかったな。
調査員B:改装前はスキンケア製品目当てのインバウンド客が多かったので、スキンケアとメイクアップの2フロアにしたことは頷けます。インバウンド客に便利な振り分け方ですし、混雑緩和にも寄与している点は理解できるのですが……。
調査員A:こういう風にするって決めた時は各ブランドからの反発も多かっただろうね。ただ、その気持ちも分からなくはないんだよね。ほとんどのブランドがスキンケア、メイクの両方を持っているわけだから、セパレートするなら公平にやならないとね。なのに、しているブランドとそうでないブランドがあるし。その基準ってなんだろうって思っちゃう。
調査員B:これも、インバウンド客が基準でしょうか?2階は中国客に人気のブランドや、美容機器が集められているという印象でした。この振り分けのためにインバウンド客にアプローチできない1階のブランドもあるかと思いますし、そこは少し残念な点かもしれません。
調査員A:1階から2階への導線はどうなのかな?目的が決まっている人ならいいのかもしれないけど、2階で買い物した後、また1階で買うわけでしょ?カウンターが賑わっていたらまた待つの?
調査員B:私も全く同意見です。実際、2階から1階に降りたら大混雑で、「これは待てない、また今度にしよう」と思ってしまったほど。せめて買いたいアイテムの決まっているお客さまを1階(または2階)だけでなく、ECに送客する仕組みを作った方がいいと思いました。また、改装前から2階にはメイク中心の「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」「ディオール バックステージ ストゥーディオ(DIOR BACKSTAGE STUDIO)」を導入していて、その後改装で2階がスキンケアフロアになったから、今ではこの2つのブランドが2階にあることに気が付かない人も多そう。1階の「ディオール」からもかなり離れた位置ですよね。以前を知らない人にしてみたら、なぜ分けてこの場所に?って思うでしょうね。
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