※この記事は2019年8月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
鷲田清一「ひとはなぜ服を着るのか」を再び
「いったいこの件はどう考えたらよいの?」。そんなモヤモヤとした気分になる“事件”が最近多いですね。ワイドショーを賑わしている、あいちトリエンナーレ問題や吉本問題、終わりが見えない香港・中国問題……。ファッションに近いところでは#Kutoo問題もそうです。
「忖度」という言葉が象徴するように、守られてきた既得権益や悪しき慣習が明るみに出るのは良いことだけど、SNS上やワイドショーでこれらの事件について議論が交わされているのを眺めているとなんだかモヤっとします。少ない知識や感情を元に是か非か、正解か不正解かと黒白をつけたり、ましてや対象を糾弾して溜飲を下げたりしても解決はせず。“知りたいのは正解ではなくこの問題をどこからどう考えるかなんだよな~”とモヤっとします。
そんな時に助けになるのが、学者や知識人の知恵です。特に哲学者や社会学者のモノの見方は行き詰まりがちな今の時代に風穴を開けてくれます。あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」問題について朝日新聞に寄稿した、宮台真司・社会学博士の言葉を読んですっきりした人は多いのではないでしょうか?
服の廃棄問題もそうです。服を作り、消費者の欲望を喚起し、売り、余ったらセールにかけて、それでも余ったら廃棄する。業界関係者の多くが疑いもせず半年に一度繰り返してきた、そして今も繰り返しているこのサイクルが、どうやら立ち行かなくなってきています。消費者は笛吹けど踊らず、地球には負担をかけています。だからと言って自分たちがやってきたことを即否定するのは難しく、考え方を変えることは簡単ではありません。
この記事には、そんな風にファッションビジネスの課題に行き詰った時、何をどう考えたらよいか、ヒントをくれる本がいくつか紹介されています。ここでは記事の切り口上新刊のみですが、参考になるのはもちろん新刊だけではありません。たとえば1998年に初版が発行された哲学者・鷲田清一さんの「ひとはなぜ服を着るのか」はこの世界の古典とも言える存在であると同時に、今読んでもハッとさせられるフレーズがいくつも見つかります。ちなみに、鷲田清一さんの本は、新刊「生きながられる術」も面白いです。通勤のお供にいかがでしょうか?
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