※この記事は2019年8月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「SPUR」の視点が面白い
最近、雑誌「シュプール(SPUR)」の編集の切り口が面白くて注目しています。最新の10月号で言えば、「“クラシック”は新しい 4 レディM:令和の女」という見出しが躍るファッションシューティングのページは、そうとは書かれていませんが雅子さまを想起させてドキッとしました。「スナップ・ジェンダーレス時代」というスナップページに登場するのはなんと、全員おしゃれな男子。7月のパリ・メンズのコレクション会場周辺で撮影しています。「生理について語るときがきた」ではタイトル通り、生理についてとことん掘り下げています。何気ない1枚の写真の背景に時事問題や社会問題が、しかも複数要素見え隠れしていて、それに気がつくとドキッとするのです(笑)。
集英社の雑誌の中でもハイエンドな“モード”の部分を担い、ラグジュアリーブランドとのつながりも深い同誌ですが、ハイエンドを扱っていると陥りがちなとっつきにくさはナシ。むしろすごく人懐っこい“モード”です。その理由は、単に「着やすい服を扱っている」といった表層的な理由からではなく、「モードを人懐っこく扱うよ」というポリシーがあって具体的な戦略に落とし込まれているからなんだなと、五十嵐真奈編集長と話していると分かります。
五十嵐編集長は、「機嫌がよい誌面、機嫌がよいモード」といった表現をしていますが、それが思いっきり実行されていたのが2018年3月号。なんと、誌面に登場するモデルがタイアップページを含めて全員笑っていました。ちょっとイッちゃっています!だって、撮影にはそれぞれテーマがあり、クリエイターにはビジョンがあるのに、“笑顔”という一見すると優しく実は難易度が高い強烈な制約をかけちゃうんですから。
イッちゃっている、はもちろん褒め言葉です(笑)。簡単なようでハードルの高い制約。それが雑誌のポリシーにつながっているのですよね。制約はクリエイションの生みの親と言われますが、笑顔が制約になるとは……。もちろん登場する「笑顔」の種類は、「破顔」から「ほほ笑み」「目だけは笑ってない」までさまざまでしたがそれがまたおもしろかったです。
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