1月16日はハロウィンではありません。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」が2020-21年秋冬メンズ・コレクションをパリで発表した日です。ブランドの崇拝者らにとっては、ハロウィンのコスチュームよりも気合が入る重要な日なのです。今季も彼らはやってくれました!奇妙なシルエットの黒の衣服をまとい異様な空気感を放ち、会場周辺はブランドの世界観に包まれています。まるで地球ではないほかの星へと迷い込んでしまったような、そんな感覚さえ覚えるのです。少し足がすくむくらい威圧的な外見の方も見かけましたが、異様なものほど触れたくなる性分なので(笑)、今季は思い切って彼らに声を掛けてみることにしました。謎に包まれた「リック・オウエンス」崇拝者たちの素顔を少しのぞいてみましょう。
マスクを外すとただのイケメン
「両親も応援してくれてます」
ショー会場周辺に着いてまず目に留まったのは、レースのマスクを顔に覆った謎の人物!その正体はパリ在住の18歳、トニーさん。「12歳の時にコレクションを初めて画像で見て、衝撃を受けた。同年代で『リック・オウエンス』なんてみんな知らない。『アディダス(ADIDAS)』とか着てる歳だよ、分かるでしょ?」。現在はリックに憧れてデザイナーを目指し、専門学校でデザインを学んでいるそうです。帽子とシューズ以外、着用しているのは全てトニーさんが制作したもの。マスクの奥の素顔が気になるなぁとさり気なく言ってみると「取ろうか?」とすんなり外してくれました!10代らしいあどけなさが残る素顔は、マスクとのギャップもあってとても可愛く見えます。両親は彼のスタイルや夢を否定せず全面的に応援してくれているそうで、今後ビッグデザイナーになるかも。
このファッションは通常運転
「実は『グッチ』も着ます」
2メートル近い長身でモデル体型の彼の名前はミグニーさん。ニューヨークを拠点にビデオクリエイターとして活動中。長年「リック・オウエンス」のファンで、彼から常にインスピレーションをもらっていると、興奮気味に話してくれました。ファッション・ウイークだからといって特別ドレスアップしているわけではなく、普段からこんな感じのスタイルだと言い切ります。「リック・オウエンス」から少し浮気して「グッチ(GUCCI)」や「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」もたまに着るのだそう。そんな話を聞きながら、私は毛穴の一切ないきめ細やかな彼の肌に見とれてしまいました。うらやましい!
普段は白衣をまとう看護師
「本当は職場でも真っ黒の服を着たい」
大柄な体つきとサングラスによって威圧感はあるものの、笑顔で対応してくれたローレンスさん(左)とカスダルドさん。ローレンスさんの職業はユーロスター(ロンドンとパリを結ぶ高速列車)のマネジャーだというから驚きです。大企業に勤務するお堅い仕事柄ですが、昔から「リック・オウエンス」が大好きで収集しているのだとか。「職場にもこの格好で行けたら毎日最高なんだけど、現実は甘くないね(笑)」。一方カスダルドさんは病院に勤務する看護師と、こちらも意外な職業でした。「職場では純白の白衣、休日は真っ黒な『リック・オウエンス』と対照的な服装」。2人ともプライベートと仕事はきっちり分けていて、オフの日に集まるのはリック崇拝者をはじめとするファッション好きばかりのようです。
これぞお手本の着こなし
「歴史的建築物の執行役員です」
「着る人によって衣服はこんなに変わるのか」と感動さえ与えてくれたのは、こちらの素敵なマダム。パリ在住のキャロラインさんは、パレ・ロワイヤル(Palais Royal)の執行役員!パレ・ロワイヤルは17世紀に王宮として建てられた歴史的建築物で、現在は骨董品店や画廊など一般向けに解放されているスペースの他に、文化省や国務院も入っています。つまり、とってもハイクラスな職業。彼女の内側からにじみ出る凛とした優雅さによって、「リック・オウエンス」の衣服が持つ美しさの側面が最大限に引き出されているようです。服を“着こなす”とはこういう事かと、一瞬見かけた彼女から多くを学べた気がします。
会場ではおなじみの2人
人気すぎて話しかけられず
韓国出身パリ在住のアーティスト、ララさん(左)と彼女のメイクを手掛けたメイクアップアーティストのサムさんは一際特異なリックオーラを放っていました。サムさんのインスタグラムを拝見すると、特殊メイクではなく普通のメイクアップもたくさん手掛けているようです。角のような骨のような、垂れ下がっているのは一体どうなっているのか——いろいろと聞きたかった2人ですが会場では人気者で話しかける隙がなく、取材は次回に持ち越しです。