東レはアパレルの在庫管理などに使用するRFIDタグで、従来の5分の1以下のコストで製造できる技術を開発した。従来の複雑な製造法ではなく、電子回路を直接プリントする技術を使うことで、大幅に生産工程を削減できる。RFIDタグは、RFIDインレイ(アンテナ付のICチップ)を紙のブランドタグや値札の中に挟み込んで製造。主要なサプライヤーは現在テンタックやナクシスなど織ネームやブランドネームから業容を発展させてきた企業だが、東レは「インレイだけでなく、完成したタグ供給も視野に入れる」という。
RFIDインレイをプリントして製造する技術自体は従来から知られていたが、電波をうまく飛ばすことができなかったという。東レは自社開発で導電性のカーボンナノチューブを開発。直接プリントによるRFIDインレイの開発にこぎつけた。東レは従来5〜10円と言われているRFIDインレイの価格を1〜2円にまで引き下げる。来年3月までにサンプルを出荷し、アパレル企業との実証実験をスタート、早ければ2023年3月までに事業化に進めたい考え。
「ザラ(ZARA)」や「H&M」など海外での導入が先行していたRFIDタグは、この数年で日本市場でも導入が急拡大しており、日本でも市場規模は10億枚程度まで拡大している。中でも最大のRFIDタグのユーザーは、東レとウエアの開発と供給で戦略的なパートナーシップを契約している「ユニクロ」「ジーユー」を擁するファーストリテイリング。画期的な低価格RFIDインレイの開発を武器にした東レが、RFIDタグの完成品でも「ユニクロ」への供給を始めれば、アパレルラベル・タグ業界の再編のきっかけになりそうだ。