「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2020年春夏コレクションは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのパリが華やかだった時代、ベル・エポックに思いを馳せた。テーマは、“ジェンダーの流動性”。中性的な魅力を放つアーティスト、ソフィー(Sophie)が歌うエモーショナルな映像を背景に、ロマンチシズムとアール・ヌーボーがダンディーな人々のワードローブに影響を与えた時代の記憶を蘇らせた。パフスリーブやベルスリーブ、ラウンドカラー、チューリップスカートといった曲線的なデザインと、テーラードアイテム、カラフルなプリントやスパンコールの装飾で、華やかかつノスタルジックなスタイルを提案する。
バッグの中で印象的だったのは、懐かしいビデオカセットテープのモチーフと、多くのバッグにレザーを編み込んだチェーンを付けたこと。ビデオカセットテープは、その形状を象ったバッグ(予定価格62万5000円)やモノグラム・キャンバスの上にプリントしたトートバッグ(同21万4000円)に採用。チェーンは取り外し可能で、バニティーケースのようなバッグや卵型の “エッグ バッグ”、細いショルダーストラップも付いたがま口タイプのクラッチ、ヌメ革でアップデートされた“スピーディ”などにあしらわれた。そのほか、モノグラムの“AirPod”ケースやリップスティックケースも登場した。
シューズは、バッグ“ドーフィーヌ”に見られるLVロゴの金具からインスピレーションを得たアッパーのデザインがカギ。ローファーからスポーティーなカラーリングのヒールシューズまでにバッグ同様の金具があしらわれている。モノグラムのフラワーモチーフを象ったヒールのデザインもポイントだ。また、スエードとレザーを組み合わせたプラットフォームのロングブーツや、ラバーのトーキャップを配したキャンバスのレースアップショートブーツも打ち出す。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。