2020年という新しいディケードの始まりは、一体どんな年になるのだろうか。日本にとっては近年にない大型イベントであるオリンピックの開催年であり、米国は11月のアメリカの大統領選挙を控え、現在の米国のダウ平均は2万9000円と過去最高水準になり、日経平均もそれにつられて2万4000円に迫る勢いにある。
だが、世界のアパレル産業は、2年連続の暖冬で多くのアパレル企業・小売企業が過剰在庫を抱えている。世界中に部材を供給するアジアの有力アパレル部材サプライヤーは2019年の上期から業績にブレーキが掛かっており、今年の暖冬は世界のアパレル産業の置かれた状況を黄色信号から赤信号へ変えた可能性は高い。世界中のあらゆるカテゴリーにファスナーを供給するYKKの松嶋耕一取締役副社長は昨年11月の時点で、「カテゴリーと地域に関係なく、世界的に流通在庫が膨らんでいる可能性がある」と指摘。繊維機械大手の島精機製作所も業績を悪化させており、その影響は部材の上流の機械にまで及んでいる。世界のアパレル産業は近年になく、上流の素材から下流の小売りに至るまで厳しい状況にある。(この記事はWWDジャパン2020年1月20日号からの抜粋です)
こうした状況は、さまざまな面から実需型ビジネスモデルへのシフトをもたらしそうだ。一つ目は大型商業施設を筆頭にしたリアル店舗のMDカレンダーの修正だ。日本に限らず、セールイベントはアマゾンやゾゾタウン、アリババなどの有力通販サイトが決定権を持ち、百貨店やファッションビルなどの大型商業施設でもそれに引きずられる形で前倒しされている。在庫が膨らんでいるコートなどの重衣料を例に挙げれば、最もコートが売れるはずの12月下旬から実質的にはセールが始まっており、プロパー価格での販売期間はどんどん短くなり、アパレル企業の業績を悪化させている。商業施設側の強い要請があっても、在庫を多く抱えたアパレル企業は今年はシーズンを先取りした従来型のMDに対応する余力を失っており、否応なく実需型MDへと雪崩を打ってシフトする可能性が高い。
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