こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。今週はパリで開催中の2020年春夏オートクチュールの取材日記をお届けします。突然ですが弊紙のルーツはデザイナーの森英恵さんにあります。森さんは1960年代にNYに進出し米国の「WWD」と出会い、77年にはパリ・オートクチュール協会からアジア人初の正会員として認められました。女性がバリバリ働くこと自体が珍しかった当時に臆せず海外へ出ていった彼女のフロンティア精神があるから今がある。だから受け継いだわれわれもオートクチュールを大切にしています。
1月20日(月)10:00
「スキャパレリ」で
オートクチュールがスタート
オートクチュールの初日はいつも「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」から始まります。ローマ生まれのエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)が1927年にスタートした歴史あるブランドで、現在のアーティスティック・ディレクターはアメリカ人のダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)。ローズベリーは戦中・戦後に活躍したスキャパレリについて「彼女の偉業の一つは、混沌とした時代に人々はファンタジーを必要とすることを理解していたこと」と言っていますが、今の時代もそれが当てはまるな、とこの夢見るドレスを見て思います。
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12:00
頭脳派「イリス ヴァン ヘルペン」の今季は神経解剖学
異分野とファッションをつなげて独特の世界観を切り開いているのが「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」です。今回の着想源はスペインの神経解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハル(Santiago Ramón y Cajal)とヒドロ虫。「ってそれ誰で何!?」ですよね。短く説明するのは困難なので興味が湧いた方はぜひ調べてください。そして、もう一度写真や下記の動画を見てください。きっと“なるほど”と思うはず。自然の摂理に則ったものは美しいのです。
14:30
女性の体の美しさを引き立てる
「ディオール」
「ディオール(DIOR)」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuli)=アーティスティック・ディレクターはこれまでもショーを通じて、フェミニズムに関係する文学者や芸術家に光を当ててきましたが、今季はアメリカ人アーティスト、 ジュディ・シカゴ(Judy Chicago)にフォーカス。シカゴの言葉“What if Women Ruled the World ?” (もし女性が世界を支配したなら?)をテーマにし、主に会場装飾に取り入れました。ロダン美術館の庭園に立てたまあるいテントは、シカゴの巨大な作品でありインスタレーションという位置づけです。オートクチュールを買いにきた世界の富裕層はきっとシカゴの思想に影響を受けるでしょうし、考えさせられるはず。美と智を伴う壮大なアクションです。
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動画で布の動きをぜひ見てください
16:00
ロダン美術館でしばし考える
今年のマイ・テーマは、“セカセカしないで最後までよく考える”。ならばロダン美術館に来たのだから彫刻「考える人」を見なくちゃ、とショーの後にしばし滞在しました。すると意外な出会いが!
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ウワサの
ギャラリー・ラファイエットを
パトロール
シャンゼリゼに昨年春オープンした新しいコンセプトのギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)をパトロール。ポップアップでガンガン打ち出していたのは「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」でした。
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21:00
「ディオール」のディナーで
心理学者と語らう
今日はとことん「ディオール」デーで、夜はディナーに出席しました。一本の長~いテーブルに160人が着席する幻想的なテーブルセッティングで、私の両隣はいずれもローマから来たマリア・グラツィアの友人だそう。ひとりは心理学者でひとりは(多分)アーティストで、スノッブという表現からはほど遠いナチュラルで優しい人たち。こういう友人関係がマリア・グラツィアの懐の深い感性を育んでいるのだな、と思ったのでした。
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おまけ
「ディオール」の化粧品を
愛用しています
「ディオール」デーだからという訳ではなく、日頃からメイク用品は「ディオール」を愛用しています。なぜなら「ディオール」メイクアップ クリエイティブ & イメージ ディレクターであるピーター・フィリップス(Peter Phillips)の仕事が好きだから。彼が作り出す繊細なトーンや質感が好きで出張の度に羽田空港の免税で買っています。今回買ったのはこれら。アイシャドーに入っているパープルの絶妙なトーンが気にいっています。