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ダイヤモンド業界、19年は原石の売り上げが25%減 政情不安でラグジュアリー消費が冷え込む

 ダイヤモンドの業界団体アントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センター(ANTWERP WORLD DIAMOND CENTRE)とコンサルティング会社のベイン&カンパニー(BAIN & COMPANY)が共同で発表した「グローバル・ダイヤモンド・インダストリーリポート2019(Global Diamond Industry Report 2019)」によれば、18年および19年上期におけるダイヤモンドの売り上げが減速しているという。

 これは主に地政学上の不透明感が原因となっており、19年全体ではグローバルで2%減となる見込みだ。中でも米国と中国での売り上げ減少が大きく影響している。同リポートは、「米国の19年の売り上げは前年比2%程度の落ち込みになると見られている。理由としては中国人観光客の減少によるラグジュアリー製品の売り上げ低下、米政府が19年9月に中国製ジュエリーに対して15%の追加関税を課したこと、またこれによる消費意欲の冷え込みが挙げられる。中国の場合、18年は同4%増だったが、19年は同5%減になると予想される。これは人民元安の進行や米中貿易摩擦による消費意欲の低下に加えて、香港で18年半ばから続いている大規模なデモによって同地域の小売業が低迷していることの影響が大きい」と分析する。欧州でも、ブレグジット(EU離脱問題)に揺れるイギリスや、反政府デモが長期化しているフランスなどで売り上げが落ちている。

 ダイヤモンド業界自体の見通しの甘さもある。17年のダイヤモンド生産量は前年と比べて2600万カラット増と1986年以来の大幅な増産となったが、2018年下期には前述の理由で需要が停滞し始めたため、大量の余剰在庫を抱えることとなった。これを受けて、「採掘・生産会社は19年の生産計画を見直したほか、原石の最低発注数量をこれまでの半分にして価格も5%程度下げた。中小規模の会社では10%近く下げたところもある。19年の生産量は4%減となっているため、21年以降は天然ダイヤモンドの供給量が年におよそ8%減少していくだろう」という。なお、19年の原石の売上高は前年比25%減と大幅に減少している。

 研磨済みダイヤモンドの先行きも明るくない。同リポートによれば、「ダイヤモンドジュエリーの需要が世界中で減速していることから、19年の売上高は前年比10~15%減となっている。大手小売りは在庫調整に乗り出しており、中間部門の業者は資金調達が難しくなってきている」という。また、ECの台頭も研磨済みダイヤモンド市場に影響を与えている。「ECは従来の小売りよりも効率的なサプライチェーンであることが多く、在庫も少なくて済む。中間部門の業者はビジネスモデルを考え直す必要があるだろう」と、同リポートは説明する。

 天然ダイヤモンドが苦戦する一方で、合成ダイヤが伸びている。19年の生産量は前年比15~20%増となったが、多くが中国企業によるものだ。「中国では高温高圧法で原石を生産しており、価格の安さで勝負している。米国では生産工程を自社グループ内で行い、合成ダイヤでも高級感のあるジュエリーを手掛ける方向に進んでいる」。

 20年以降の展望については、「引き続き地政学上の不透明感があり、世界的な景気後退が予想されることから、市場は今後も不安定だろう。特にノンブランドや低価格帯のジュエリーはマーケティングもあまり行われないため、いっそう厳しい展開となるのではないか」と同リポートは予想する。しかしその一方で、「歴史的に見て、ダイヤモンド市場は危機に直面しても1~2年で回復している。現在の不況を別にすれば、同市場の売り上げが落ちたのは過去50年間でたった4回だ。その間にダイヤモンド原石の生産量は3倍に成長し、価格は原石が450%増、研磨済みが250%増となっている」と、業界を鼓舞するような記述も見られた。

 市場を回復させるには、世界中で拡大している中間層のニーズをつかむ必要があると同リポートは説く。「中間層の購買力が拡大している国、中でも中国とインドに注力するべきだろう。増加した可処分所得でダイヤモンドを買ってもらうには、それを促す戦略的なマーケティングが必要だ。そうしたマーケティングによる販売支援が不足しているために、消費者の好みが天然ダイヤから合成ダイヤにシフトする可能性もある」。

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