「幸せでサステナブルな働き方って何だろう?」――その答えの一つが、山形県鶴岡市のスタートアップ企業スパイバーにあった。同社は、化石燃料に頼らない新たな素材“人工構造タンパク質素材”の開発で知られ、これまでに300億円以上の資金を調達するなど、世界からも注目を浴びる革新的技術開発を行っている。
「どういう仕組みにしたら、いい循環が生まれるのか」。スパイバーの関山和秀・取締役兼代表執行役は技術開発による“素材革命”だけではなく“働き方革命”をも起こそうとしている。鶴岡市の本社を訪れて強く印象に残ったのは、皆がもくもくと、でも生き生きと仕事をしていたこと。社員全員が同じ方向を向いて取り組むまれな企業ではあるが、実はその企業体制も極めてユニークだった。
「企業のコストパフォーマンスが上がり、社会全体としての効率が上がれば、資源の節約にもなる」と関山社長は話すが、その実現のために「自分の時給は自分で決める」という給与制度を取り入れている。その意図を関山社長に聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年1月20日号からの抜粋に加筆しています)
“働き方への取り組みも実験の一つ。幸せに働き続けるために”
WWD:化石燃料に頼らない世界が実現すれば、サステナブルな世界になると思う?
関山和秀・取締役兼代表執行役(以下、関山):一言で答えるのは難しい。われわれが取り組んでいる人工構造タンパク質素材の開発や社会の仕組みを考えることは、対処療法的なアプローチで、起きた問題に対する技術を開発している。それと並行してやらなきゃいけないことは、人のマインドセットをどう変化させるか。世界の人口増加が進む中で、もっと豊かな暮らしがしたいとか、もっとこういうものが欲しいと求め続けると、地球は1個しかないのでどう考えても行き詰まる。
われわれの研究で多少の余裕はできるが、結局使い果たすことになる。われわれはできるだけ少ないリソースで大きな役割を果たせるかどうかを実験しているようなもので、実は自社で保育所を持っているのもそういうところにつながっている。
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