雑誌「装苑」の専属モデルを務めるモトーラ世理奈。その独特の存在感で同性を中心に多くのファンを獲得している。また「アンダーカバー」2018-19年秋冬コレクションにも参加し、パリコレデビューも果たした。18年に映画「少女邂逅」で本格的に女優の仕事をスタート。その演技力への評価も高く、1月18日から公開中の映画「猫、かえる」、1月24日から公開中の映画「風の電話」、2月22日公開の映画「恋恋豆花」と映画への主演が相次ぐ。現在21歳。モデルとしても女優としても、今後さらなる飛躍が期待される彼女の魅力に迫る。
WWD:現在さまざまなメディアで活躍しているモトーラさん。もともとモデルの仕事をするようになったきっかけは?
モトーラ世理奈(以下、モトーラ):高校1年(2014年)の4月に原宿で今の事務所の人からスカウトされたのがきっかけです。その年の10月に、雑誌の「装苑」に顔見せに行ったら、そこで“ニューカマー”という企画に選んでいただいて、15年1月号の「装苑」でモデルデビューしました。それから少しずつモデルの仕事をするようになって、17年5月号から「装苑」の専属モデルになりました。
WWD:もともとモデルになりたいという気持ちはあった?
モトーラ:小さい頃からファッションが好きで、小学校1年生のときから、将来は女優とモデルをやりたいとずっと思っていました。それでモデル事務所のオーディションも受けたりしていたんですが、受からなかったです。
WWD:モトーラさんといえば16年に発売されたRADWIMPSのアルバム「人間開花」のジャケットが印象的だが。
モトーラ:アルバムが発売されたときは高校2年だったんですが、発売されてからは高校の後輩からも声をかけられるようになりました。
WWD:最近は女優の仕事も増えている。
モトーラ:映画デビューは18年に公開された「少女邂逅(しょうじょかいこう)」でした。それまでもいろいろと映画やドラマのオーディションは受けていたんですが、最初に合格したのがこの作品だったんです。「少女邂逅」は群馬県の高崎で1週間くらい泊まり込んで撮影したんですが、それまでそんなに家から出たことがなくて、合宿みたいで楽しかったです。
WWD:モデルと女優、どちらが好き?
モトーラ:どっちも好きです。最初映画に出たときには何も分からずに、モデルとは全然違うなと思っていたんですが、やっていくうちに「モデルも女優も一緒だな」って思うようになりました。どちらも“何かになる”ということが共通していて、一つのパートとして作品に携わるという気持ちでやっています。日本ではあまりハーフの女優がいないし、私自身そこまでみんなが親近感を持ちやすい見た目でもないと思うんですが、そんな私が女優として役を表現するのは新しいなと感じています。
映画「風の電話」で感じた女優への手応え
WWD:1月24日から公開されている映画「風の電話」※では主役のハルを演じる。女優としての手応えも感じている?
モトーラ:気持ち的にはお芝居の仕事を始めたときとそんなに変わらないです。でも「風の電話」が完成して初めて見たときは、そこに映っているのが自分じゃないような気がしました。今までの作品は「こういう表情よくするな」とか「こういう仕草よくするな」と思うことがあって、普段の自分を見ているようで恥ずかしさもあったんですが、「風の電話」でははまったく違う人に見えて、それがおもしろいなって思いました。
※映画「風の電話」は、実際に岩手県の大槌町にある電話線がつながっていない“風の電話”をモチーフにしたロードムービー。その風の電話を使うと亡くなった人と話ができるといわれている。風の電話は2011年に設置され、東日本大震災以降、多くの人が訪れている
WWD:映画「風の電話」ではストーリーに沿って順番に撮影(順撮り)していったそうだが、映画では珍しい。
モトーラ:やってみて順撮りでよかったなと思います。今作はロードムービーで広島の家から始まって、風の電話のある大槌町に行くストーリーなんですが、自然にハルと同じ気持ちになりやすかったし、ハルになりきっていたと思います。
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WWD:セリフがきちんと決まった台本がなく、全部即興での演技だったとか。
モトーラ:そうです。台本もなくざっとストーリーが書いてある紙が撮影の朝に10枚ほど渡されて、それをもとに演じていくという流れでした。最初はこのストーリーだと30分くらいで終わっちゃうんじゃないかって思うほどでした(笑)。事前に何となくセリフを考えてくる人もいたんですが、私は現場に行ってみないと分からないなと思って、何を言うかはあまり考えてなかったです。即興芝居はその場で自由に演じるのですが、私はセリフを覚えて演技するよりも、相手を感じて演じられるのでやりやすかったです。
WWD:撮り直すこともあった?
モトーラ:シーンによっては撮り直すこともありました。演技をしているとみんなが何か違うなと思うことや、「今のよかったね」って思うときがあって、それがおもしろいです。
WWD:西島秀俊さんや西田敏行さん、三浦友和さんら大御所との共演はどうだった?
モトーラ:そうですね。衣装合わせで最初にお会いして、そのときはすごく緊張したんですが撮影が始まったらハルという役と同じ感覚で接していたので、緊張はしませんでした。
WWD:風の電話は亡くなった人と話せるといわれているが、モトーラさんが話してみたい人はいる?
モトーラ:ひいおばあちゃんです。中学1年生くらいのときに亡くなったんですが、私が物心ついてから身近で初めて亡くなった人でした。それまで普通に遊びに行ったりもしていたので、また話してみたいです。
WWD:「風の映画」はどんな人に見てもらいたい?
モトーラ:年齢や男女に関係なく、多くの人に見てもらいたいです。ハルと一緒に旅をしている気持ちで見てもらえたらうれしいです。
モデルとしても女優としても海外に挑戦したい
WWD:モデルとしては「アンダーカバー」2018-19年秋冬コレクションにも参加して、パリコレにも出演している。当時はどんな気持ちだった?
モトーラ:そのときはヨーロッパに行くのも初めてで行く前はすごく楽しみでした。ショーの前までは、普通にパリ楽しいなと思っていたんですけど、ショーの瞬間はなんとも言えない特別な気持ちになりました。
WWD:モデルとしても活躍するモトーラさんのファッションのこだわりは?
モトーラ:「着たいものを着る」。着てみてテンションが上がらなかったら着替えることもあります。ただ自分はこういうスタイルとかあまり決めたくなくて、何でも着たいなと思っています。
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WWD:美容に関してはどうですか?
モトーラ:基本的なことしかしないです。メイクは普段あまりしないです。メイクは少しやっただけで大きく変わってしまうので、正解が分からなくて。だったらあまりやらなくていいやって思ってしまっています(笑)。でもその分、仕事でいろいろなメイクができるので楽しいです。
WWD:影響を受けた人はいる?
モトーラ:最近はアメリカのバンド、クルアンビン(KHRUANGBIN)がお気に入りで、去年は「フジロック」と渋谷のクラブクアトロでライブを見ました。女性のローラ・リー(LAURA LEE)がベースを務めているんですが、それに影響を受けて私もベースを購入しました。最近はあまりベースの練習ができていないのですが、弾けるようになったらバンドも組んでみたいです。
WWD:音楽フェスはけっこう行く?
モトーラ:そうですね。「フジロック」とか、去年11月には初めて海外のフェスに行きました。ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)が主催している「Camp Flog Gnaw Carnival 2019」というフェスで、ソランジュ(SOLANGE)やFKA ツイッグス(FKA TWIGS)が見たくて行ったんですが、日本のフェスとも違う雰囲気でおもしろかったです。今年も機会があれば、海外も含めていろいろなフェスに行きたいです。
WWD:好きな映画は?
モトーラ:岩井俊二監督の「スワロウテイル」です。
WWD:女優としてやってみたい役は?
モトーラ:SFには挑戦してみたいです。誰だか分からないくら特殊メイクをするような役をやってみたいです。
WWD:最後に今後の目標は?
モトーラ:モデルとしても女優としても、海外に挑戦したいです。まずはモデルからやっていきたいと思っています。