中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの被害拡大を受け、中国政府が27日から団体旅行を一時禁止した。中国人の大型連休である春節(旧正月)の時期と重なり、日本の百貨店は中国からの大口顧客を失うことになる。
影響は免税売上高の比率が高い都心部の旗艦店などで大きいとみられる。高島屋は新宿店、大阪店などで免税売上高が大きな割合を占めるが、「現時点では対策のしようもない」(高島屋広報)と肩を落とす。大丸松坂屋百貨店は、リニューアルした大丸心斎橋店が1月(1~14日)の免税売上高が前年同月比で約4割伸びるなど好調だったが、「大きな影響は避けられない。店内では消毒液の設置などを徹底する」(大丸松坂屋百貨店広報)。三越伊勢丹は、基幹店の伊勢丹新宿本店、三越銀座店において免税売上高の割合が2~3割を占める。「中国のお客さまだけでなく、国内のお客さまの足が遠のく可能性もある。店内で体調を崩された方への対処など、店舗でのオペレーションを強化し不安を取り除く(三越伊勢丹広報)」。
近年の百貨店は、春節で増加する中国人客のインバウンド需要を背景に、衣料品の端境期(1~3月)をカバーする構図だった。19年2月における免税売上高は高島屋が前年比で8.6%増、大丸松坂屋が同17%増、阪急阪神百貨店が同2割増。また、消費増税(10月)後はボリュームゾーンの衣料品などの不振を、インバウンド需要で堅調なラグジュアリー、時計、宝飾など高額品がカバーしていた。
各百貨店は個人旅行客にアプローチの焦点を移す。「近年は春節で売り上げが極端に増えるという図式ではなくなった。中国人のお客さまの消費スタイルも変化しており、落ち着いて買い物をしたいというニーズをしっかりつかむ」(大丸松坂屋広報)。「特に化粧品などで、しっかりと吟味して自分に合うものを購入したいという傾向が強くなっており、需要の取り込みを強化する(高島屋広報)」。