サステナブルファッションに特化した合同展示会「NEONYT(ネオニット)」がベルリン・ファッション・ウイーク期間中の1月14〜16日、現在は使われていないテンペルホーフ空港の格納庫で開催された。もともとサステナブルファッションの中でもハイファッションを扱う「グリーン ショールーム(GREEN SHOWROOM)」とストリート&カジュアルファッションを集めた「エシカル ファッションショー ベルリン」が一つになり生まれた「ネオニット」は、今回が3度目の開催。世界22カ国から過去最大となる210を超えるブランドが出展したほか、ファッション業界の未来を考えるカンファレンスやパネルディスカッションが開かれた。来場者数は公表されていないが、サステナビリティへの意識の高まりに伴い、使用する素材や生産背景に責任を持ったブランドを探すバイヤーは確実に増加しており、会場は賑わいを見せた。
ただ、サステナブルファッションを取材する中で常々感じているのは、サステナビリティを実現するためにデザインを犠牲にしたり、価格を大幅に上げたりしてしまっては、消費者には受け入れてられるものは生み出せないということだ。展示ブランドの中にはまだ洗練に欠けるブランドが多いのも事実だが、年々良い意味で“サステナブルっぽくない”ブランドも増えている。ここでは、そんなファッション性、手ごろな価格、サステナビリティへの配慮の三拍子がそろったブランドやコレクションを4つお届けする。
VIKTOR & ROLF X CALIDA
1941年にスイスで創業したアンダーウエアブランド「カリダ(CALIDA)」は、2018年に初めて「クレイドル・トゥ・クレイドル(“ゆりかごからゆりかごまで”を意味する完全循環型のモノ作り)」のシルバー認証を受けたTシャツを発売。その発展形として、20年春夏から「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF以下、V&R)」との協業によるカプセル・コレクションをスタートさせる。スローガンは、過去に「V&R」のオートクチュール・コレクションで使われたフレーズ“I want a better world”をアレンジした“We want a better world”。“テンセルリヨセル”やストレッチ繊維の“ロイカ”、オーガニックコットンを用いた100%堆肥化可能なコレクションで、男性用のボクサーブリーフやトランクス、女性用のシームレスショーツといった下着類をはじめ、Tシャツ、スエットシャツ、スエットパンツ、ナイトウエアをラインアップする。デザインのポイントは、地球やバラ、木のモチーフと手書き風の文字やスローガンのプリント。ウィメンズには、肩や胸元にフリルがあしらわれているものもある。アイテムはハンガリーの自社工場で生産。価格帯は下着類12〜25ユーロ(約1400〜3000円)、Tシャツ49〜69ユーロ(約5800〜8200円)、パジャマ90〜160ユーロ(約1万〜1万9200円)などで、通常ラインと同程度になるという。第1弾は5月、スエットなどアイテムのバリエーションを広げた第2弾は10月に発売予定。スイスやドイツにあるヨーロッパ内の旗艦店とオンラインショップなどで取り扱い、オンラインショップは日本への発送にも対応する。
ARMEDANGELS
エコ&フェアトレードにこだわったカジュアルウエアを提案する「アームドエンジェルズ(ARMEDANGELS)」は、これまでベルリンで同時期に開催されている合同展「プレミアム(PREMIUM)」に出展していたが、来場者にブランドのメッセージをより明確に伝えるため、今回から「ネオニット」に切り替えた。2007年にドイツ・ケルンで創業した同ブランドは、まだ学生だったマーティン・ホーフェラー(Martin Hoefeler)CEOが、自分で仕入れたオーガニックコットンTシャツにオリジナルプリントを施して販売したところからスタート。現在は、シャツやニット、スエット、ジーンズ、ワンピース、マフラーなど、メンズ&ウィメンズのウエアを幅広く手掛けている。素材は、GOTS認証を受けたオーガニックコットンや、オーガニックウール、リサイクルプラスチック、環境に優しいビスコース“エコヴェロ”などを使用。ポルトガルやトルコ、チュニジアで生産している。タイムレスでクリーンなデザインが魅力で、Tシャツ35ユーロ(約4200円)〜、ジーンズ100ユーロ(約1万2000円)〜といった手ごろな価格帯で提案。新たにビーツやローズマリーなど自然由来の染料で染めたカプセルコレクションも打ち出す。現在はドイツをはじめヨーロッパでの卸を中心に販路を築いており、直営はオンラインショップのみ(日本にも配送可能)。今後は北米とアジア市場開拓を視野に入れる。日本未上陸。
PINQPONQ
ベルリンの街中でもよく背負っている男性を見かける「ピンポン(PINQPONQ)」は、カジュアルなバックパックで知られるブランド。デザインとサステナビリティの両立をミッションに掲げ、2014年にドイツ・ケルンでスタートした。毎シーズン、定番モデル6型のカラーバリエーションを中心にデザインをアレンジしたアイテムやボディーバッグを提案する。素材として用いているのは、使用済みのペットボトルを原料に台湾で作られたリサイクルポリエステル。アウトドアウエアなどの撥水加工に使われることの多かったPFC(フッ素化合物)ではなく、フッ素を含まない“ネオシード”で撥水機能を実現する他、染色は水の消費を抑えるソリューションダイ(溶液染色)を採用。生産は、独立機関のフェア・ウェア・ファウンデーション(FWF)によって労働環境が監督されたベトナムのパートナー工場で行っている。また、内側にノートパソコン収納部や整理整頓に便利な複数のポケットを配した、機能的な作りも好印象。価格帯は、定番のバックパックが90〜200ユーロ(約1万〜2万4000円)、ボディバッグが30〜80ユーロ(約3600〜9600円)。20-21年秋冬には、「ブルーサイン」(スイスに拠点を置くブルーサイン・テクノロジーズによる認証で、繊維産業のサプライチェーン各段階において環境、労働者、消費者にとって安全な化学物質と加工工程および製品に与えられる)の認証を受けたバッグを発売する他、スエットシャツやTシャツ、アウトドアジャケットなどのアパレルもスタートする。現在の販路は、ヨーロッパを中心に200店舗。日本ではプラス・コンテンポラリーがディストリビューターを務め、リバースプロジェクト(REBIRTH PROJECT)のオンラインショップなど20店舗で取り扱われている。
A-DAM UNDERWEAR
今回2回目の参加となる「アダム アンダーウエア(A-DAM UNDERWEAR)」は2014年にオランダ・アムステルダムで設立。ポップでカラフルなプリントを用いたボクサーブリーフやトランクスをはじめ、遊び心あるモチーフの刺しゅう入りの靴下やスエットシャツ、トランクスと同素材のラウンジパンツ、水着など、メンズやユニセックスアイテムをそろえる。ベースとなる素材は、GOTS認証を受けたオーガニックコットン。靴下には伸縮性を持たせるために海洋ゴミや漁網などをリサイクルして作られる“エコニール”の糸をブレンドし、水着にはリサイクルポリエステルを100%使用している。デザイン面でも下着類はタグの内側に“IT’S WHAT’S ON THE INSIDE THAT COUNTS(大切なのは中身)”などユーモアあふれるフレーズがあしらわれていたり、靴下は洗濯するときに無くさないようにと履き口にボタンが付いていたりと、芸が細かい。価格はボクサーブリーフが19.95〜22.95ユーロ、靴下が9.95ユーロ(約1100円)、スエットが79.95ユーロ(約9500円)、水着が69.95ユーロ(約8300円)など。現在、オランダやドイツ、フランスなどヨーロッパを中心に約550店舗で販売されている。公式オンラインショップもあるが、ヨーロッパ内のみの発送というのが残念なところ。