中国で発生した新型コロナウィルスによって、春物衣料の生産への影響に懸念が広がっている。中国政府は1月末までだった春節(旧正月)の連休を延期し、縫製を含めた製造工場は2月9日までの休業が通達されている。中国は未だに日本で供給される衣料品の7割近く(数量ベース)を占める圧倒的な生産拠点。「現時点では軽微だが、長引けば影響が出てくるかもしれない」(TSIホールディングス)と各社は警戒を強める。
多くのアパレル企業は3日の時点では「旧正月前に生産分は入荷済みのため、調達面ですぐに影響が出ることはない」(ワールド)という声が多いが、先行きが見えない中、ひとまずは工場再開までの状況を見守るしかない状況だ。ただ、中国での短期生産を掲げていた企業には早くも影響が出ている。
オンワードホールディングス傘下のオーダースーツ事業「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」は、中国・大連の自社工場を活用して注文から最短7日で顧客の手元に届けることで人気を集めてきた。だが工場の休業延期によって納期の先延ばしを余儀なくされている。日本の店舗での受注は引き続き好調なため、「工場の再開予定の(2月)10日から縫い始めても、お客さまに届けるのは2月末になるかもしれない」(運営するオンワードパーソナルスタイル)。店頭やウェブサイトでのアナウンスで顧客に納期遅れへの理解を求める。
ワコールホールディングスは広東や大連の主力の自社工場が休業。10日に再開する予定だが、「工場が再開されて素材や副資材の調達が始まれば、さほど納期には影響はでないだろうが、政府の方針など予期できないことも起こりうる」(同社広報)と気をもむ。長引くようであれば、一部の生産をベトナムなどの東南アジアに振り替えることも視野に入れる。