中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスの世界的流行を背景に、多くの航空会社が中国路線の運航停止に踏み切っている。アメリカ、イギリス、イタリア、フランスでも中国人や中国に渡航歴のある外国人に対して何らかの入国制限措置を導入しており、今月からニューヨークを皮切りに各都市で開催される2020-21年秋冬のウィメンズ・ファッション・ウイークに、中国人デザイナーやエディター、バイヤー、セレブリティー、インフルエンサーたちが来ることができない可能性が濃厚となっている。
「エンジェル チェン(ANGEL CHEN)」や「リコストル(RICOSTRU)」はすでにミラノでのファッションショーの中止を決定している。また、ロンドンに参加予定の「アサイ(ASAI)」やパリに参加予定の「ユマ ワン(UMA WANG)」「シャッツィ・チェン(SHIATZY CHEN)」は、中国政府が国内の企業に対して2月10日までの業務停止を要請していることを受けて、中国工場での生産面での影響を懸念しており、ショーの開催については現段階で未定となっている。そして、これらブランドのクライアントやメディアパートナーもまた、ショーに出席することができないかもしれない。
ユマ・ワン(Uma Wang)は上海からパリへのフライトに搭乗することができた場合はショーを開催すると話しており、ヨーロッパの現地スタッフは全面的なサポートを行う姿勢を見せているという。
「リコストル」のデザイナーのリコ・マンキット・オウ(Rico Manchit Au)は、都市の封鎖や移動制限のために従業員の半数が仕事に復帰することができず、ショーの中止を決定したと語っている。新しいコレクションをどのように発表するかは未定だが、生産に変更を加え、今後の状況変化に合わせて2020年の活動を計画していく予定だ。
渡航禁止措置の前にニューヨーク入りした「密扇(MUKZIN)」のケイト・ハン(Kate Han)は、中国のビールブランド「ハルビン(HARBIN)」とコラボレーションしたショーを2月6日に予定している。19年「CFDA/ヴォーグ ファッション ファンド(CFDA/Vogue Fashion Fund)」でプライベートポリシー(Private Policy)にノミネートされたハオラン・リー(Haoran Li)も2月8日のショーを予定通り行うという。
ロンドン在住のユハン・ワン(Yuhan Wang)には影響がないため、若手ブランドの合同ショープログラム「ファッション イースト(Fashion East)」を卒業し、今季のロンドン・ファッション・ウイークで単独のショーを開催する。
また、中国のファッションプレスとバイヤーたちにも渡航キャンセルが相次いでいる。編集ディレクターらによると、中国版「ヴォーグ(VOGUE)」「エル(ELLE)」「ハーパーズ バザー(HARPER’S BAZAAR)」「マリ・クレール(Marie Claire)」「インスタイル(InStyle)」では一部、または全面的にファション・ウイークへの取材旅行を取りやめるとしている。
中国版「Tマガジン(T Magazine)」「WSJマガジン(WSJ Magazine)」「ウォールペーパー(Wallpaper*)」「ナイロン(Nylon)」を出版しているフアシェン・メディア(Huasheng Media)のオーナー、チュスワン・フェン(Chuxuan Feng)は、渡航制限と新型ウイルスの影響により、編集者たちがファッション・ウイークの開催都市に出向くことはないだろうと語っている。
欧州ラグジュアリーブランドの中国広報部門も、今季のファッション・ウイークに訪れることはないとの情報も複数入ってきている。イタリアの某ラグジュアリーブランドの広報担当者は、中国本土、台湾、香港の広報部門からのミラノ渡航はないと断言している。いくつかのショーでは中国プレスのセクション自体が設置されない可能性もある。
ファッション・ウイークに向かう中国人セレブたちが空港で騒がれる可能性も低い。多くのインフルエンサーがファッション・ウイークへの欠席を決めているが、デクラン・チャン(Declan Chan)とディプシー(Dipsy)は、どうにかして参加したい意向を示している。
そして、バイヤーたちにとっても渡航の可否が問題となっている。ジョイス(JOYCE)のゼネラル・マーチャンダイジング・マネジャーのマイケル・モック(Michael Mok)は、渡航を早めるか中止する必要性はあるものの、仕入れ作業は進行中だと話している。また、上海の商業施設ル・モンド・ド SHC(Le Monde de SHC)のオーナー、エリック・ヤング(Eric Young)もパリへの渡航をどうするか検討中だという。