※この記事は2019年9月2日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
百貨店よ、“振り切れ”!!
アメリカの「ロード&テイラー(LORD & TAYLOR)」、サブスクリプション企業に買収されたのも驚きでしたが、その価格が78億円なのも驚きました。現在の売上高が1470億円の企業に対して、78億円の買値……。営業利益率、メチャクチャ低いんでしょうね。今年にはニューヨーク五番街の旗艦店もクローズしたし、もはやこの程度の企業価値しか残されていないのかもしれません。買い手のサブスク企業の狙いは、ECや知的財産なのでしょう。
NYではバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)も破たんし、“小売りの冬”はまだまだ続きそうです。明るいニュースと言えばもうすぐ、マンハッタンのノードストロム(NORDSTROM)が完成することくらいでしょうか?すでに先行オープンしているメンズ館は、ノードストロムらしい手の届くラグジュアリー感と、どん欲なまでのO2Oで生き残ろうとしています。半年前にこの館を訪れた時は、入り口やレジの後ろなどに尋常ではない数のショッピングバッグが並んでいました。ECで購入しながら店頭で受け取りたいとリクエストした買い物客のための袋です。同店の営業時間は、10〜21時。マンハッタンのサラリーマンも、仕事終わりに立ち寄れます。ノードストロムのメンズ館は、確実にこれを商機と捉えた店舗設計と営業シフトでした。だって昼間はガランとしているから、最小の人数で”とりあえず営業”。スタッフの数は夕方以降急速に増えて、店頭受け取りした男性を出迎えよう、なんならもう一品買ってもらおうという戦闘態勢に入ったのが印象的でした。
比して日本の百貨店は、そこまでカタストロフィー(破滅的)な危機を迎えているワケではありませんが、連日アップしている編集部記者の鼎談を読んでいても、イロイロ変わってきたカンジですね。一つ言えるのは、もう“振り切る”しかないこと。それは、「WWDジャパン」の新連載に登場してくださった建築家も、20代のファッションフリークOLも、この鼎談で記者も話しています。
個人的に、アメリカの今は、日本の3〜5年後だと思っています。「ECの店頭受け取り」で“振り切った”ノードストロムのマンハッタン店を見ると、そして、定借で“振り切ろう”としている大丸松坂屋グループを見ていると、遠くない将来、日本の他の百貨店も何か一つに特化して行くのかな?と思うのです。それはそれで、楽しみです。
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