新型コロナウイルスの影響でビジネスにも影響が出始めているとはいえ、まだまだ活況の化粧品売り場。好調の要因はさまざまにあるが、テクノロジーを駆使した新しい製品提案や、世界観を打ち出す施策、デジタルとの相性いかん、さらには「肌に触れる」接客へのこだわりが、売り上げを左右している。混雑が進むと店頭の清潔感が失われたり、根幹の接客もままならなくなっているのではないか?こんな思いもよぎり、化粧品ブランドの店頭を覆面調査員がチェック。
第2回は、2019年11月に新たにオープンした渋谷スクランブルスクエアをピックアップ。これまで化粧品フロアといえば、1階が定番だったが、渋谷スクランブルスクエアは6階に位置する。40代と20代の2人の女性調査員が、新たに誕生した同店をどう見たのかーー。
調査員A:2回目は昨年11月にオープンした「渋谷スクランブルスクエア」をパトロールしました。渋谷も大きく変わったよね。ハチ公ではない口(あそこは何口になるんだ?)地下から地上に出ると「あれ?ここはどこ?」って(笑)。初日はエスカレーターの列に入るだけでも一苦労だったみたいだね。
調査員B:開業前から注目度が高かったですよね。3階はJR、新しくなった銀座線の改札に隣接し、地下は副都心線、半蔵門線、田園都市線、1階はバスターミナルの前で、向かいには渋谷ヒカリエ…。渋谷のビル群の中でも、断トツの好立地ではないでしょうか。
「6階に化粧品があることをもっと告知すべき」(調査員A)
調査員A:よくよく考えてみれば、このビルって商業施設なのよね。施設全体の印象を先に言っちゃえば駅直結ってやっぱり便利。上手に味方につけたなーって感じ。その中で化粧品は6階にあって。告知が足りていないよね。まさか6階にコスメフロアがあるなんて思わないんじゃない? プレス内覧会もあったの?ってくらい人が少なかったみたい。新しい館がオープンするんだから、もっとプレスを招待して告知してもらえばよかったのに。
調査員B:コスメフロアが6階にあるのは衝撃的でした。当然低層階にあると思って見ていたら、ハイブランドばかり……。友人は「渋谷スクランブルスクエアにコスメフロアなんてあったっけ?」とまで言っていました。開業までの周知が足りないだけでなく、ふらっと館に入った人にも分かるようにして欲しい……。フロアマップも少ないので、「あれ、何階だっけ」と困りました。
調査員A:分かる〜。さて、6階の「+Qビューティー」。ここは、東急百貨店が運営するフロアなんだよね。フロアの全景がダターっと見渡せ、賑やかな感じはありますね。「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「アンプリチュード(AMPLITUDE)」「トゥー フェイスド(TOO FACED)」「イトリン(ITRIM)」など渋谷エリア初となるブランドたちも良いポジションに構えていた印象。限られた敷地内にギュッといれているから、1店舗あたりの面積は「コンパクト」(←よく言えば)。悪く言えば「狭い」んだけど、実際に回ってみると、不思議とセンターに寄せ集まったブランドのカウンターは窮屈さを感じなかったのよねー。什器の高さを統一していることやメインとなる通路を2本、幅広に設計したのも良かったのでは? やはりメリハリって大事。行ってみていかがでしたか?
「狭いと感じない作りが好印象」(調査員B)
調査員B:私もまったく窮屈には感じませんでした。むしろ低めの什器で遠くまで見渡せるのでスッキリした印象です。そこにデジタルサイネージがあちらこちらに光って……華やかなフロアだなと感じました。何より、タッチアップのカウンターがどの店舗もしっかり、ゆったりした作りだったのが好印象で、狭いと感じなかったのかも。
調査員A:そもそも中央に配置したブランドのユーザーさんたちって、狭いスペースの中でワイワイしながら買うという商業施設ならではの環境に順応しているというか。「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」「M・A・C」「ナーズ(NARS)」などは他店と比べると明らかに狭いのに、「それも良し」的な。「イプサ(IPSA)」のカウンターもど真ん中にあって落ち着かなさそうに見えたけど、座ると意外と落ち着いちゃったし(笑)。
調査員B:カラーバリエーションの多いブランドは、ぎゅっと詰まっている方があれこれ見やすくて楽かもしれないと思いました。それでいて、やはりタッチアップ台は窮屈ではないので、「シュウ ウエムラ」でリップをあれやこれやとつけてもらうのは楽しかったです。混雑しすぎていると、これがなかなかできないので。
調査員A:個人的に「トム フォード ビューティ」が渋谷に来てくれたのは嬉しかったな。決して安い品ではないけど、商品ラインアップも見られるし、香水も自由に試せる。気分が上がったわ〜。奥に構えていた「シロ(SHIRO)」も一見入りずらい感はあるんだけど、あの広さがちょうど良かった。
調査員B:私も「トム フォード ビューティ」が1番嬉しかったです!高価格帯なのに、ミレニアルズには大人気。SNSでバズってるのをたびたび見かけます。「頑張れば手が出せる贅沢」って感じなのでしょうか。SNSで興味を持って、ふらっと立ち寄るにはちょうどいい立地と雰囲気です。「シロ」は広くて入りやすいですが、同じようなトーンで壁一面に違うフレグランスのアイテムが並んでいるので、商品が探しにくかったかも……。
「デジタルサイネージが
インパクト大!」(調査員A)
調査員A:先ほど話していたように、各ブランドに設置していたデジタルサイネージがインパクト大でしたね! 前から思っていたけど、プレス発表会で流す動画とかかっこいいのに見せる場がHPやSNSくらいでしょ? だからこれは正解。ブランドの世界観も分かるし、これからは思う存分流せるわけ。双方にとって良い施策だったのでは?
調査員B:SNSだとブランドの作った広告動画って見逃しちゃったり、意図的に飛ばしちゃったりするんですが、フロアの中で見るととてもキャッチ―ですね。特にスキンケアなんかは動画の方が成分の説明などが頭に入ってきやすかったりします。美容部員(BA)さんには動画で得られない使用方法などの詳細を教えてほしい。けれど、そこまで深く説明している動画は見なかったかも。うまく活用されたら、ぐっと面白い売り場になると思います。
調査員A:一方で、課題点もあり。このフロアの四隅にイベントコーナーがあるんだね。週替わり? 月替わり?でポップアップをしているけど、そのブランドの招致や使い方に疑問。テーマを決めて「これぞ!」というブランドを招致して欲しいし、例えばブランドを横断した「ヒットランキング」とか紹介してほしい。せっかく感度の高い女の子たちが集まっているのだから「渋谷の美容はここで知る」くらいの情報発信の場として活用してもいいのでは。
出店する時も駅弁みたいに並べました〜的な見せ方もちょっと……。欲張りな話なのかもしれないけど「常設?」と間違えるくらいの店構えは欲しいよね。
調査員B:「ヒットランキング」は面白そうですね!私はオープン当初の「ユアンジュ(YOUANGE)」(ゆうこすのDtoCスキンケアブランド)のポップアップなどは館・ブランドに相乗効果のある素晴らしいスペースの使い方だったと思います。そのスペースのためにわざわざ6階まで上がってくる人も多かったでしょうし、ネット販売でリアルな接点を持てないブランドにとっては好条件がそろったスペースです。なのに……。
調査員A:なのに?? どした?
「ポップアップスペースの使い方がもったいない」(調査員B)
調査員B:1月末に行ったときはちょっとそういったうまみを感じられなかった。すごく簡素な作りで、知らないブランドなのに自発的な説明がない……。おっしゃる通り、あれだけのスペースを使うなら「出店したんだ~」と思わせるくらいの空間作りをしないともったいないです。
調査員A:私は金曜日の19時頃パトロールに行ったけど、想像していたよりも空いていたな〜。客層は伊勢丹新宿本店のインバウンド需要とは打って変わって日本人が多かった。そして、驚くほどに放ったらかし(笑)。BAさんからの声掛けはほとんどなかった。(声掛けを)待っていたけど……ナシ。こちら側から話しかけないと説明に応じてもらえないという。行った時間が悪かった? 忙しかった?
調査員B:私も今回、最も気になったのは(不満だったのは)接客でした。もしかしたら渋谷という若者が多い立地上、あえてお声掛けをしないことを徹底しているのかもしれませんが、あいさつもないブランドが多々。それじゃ、何かあって声かけたくてもビビってしまいます。あとは「試せますよ」しか話しかけられなかったり……。それは知っているんだけどなぁ、と。その中でも「資生堂(SHISEIDO)」は新製品を見ていただけで、しっかり製品の良さを伝えようという気概を感じる接客をしていただき、好感度が急上昇。
調査員A:そうだよね。若い子たちが百貨店カウンターを敬遠する理由って激しい声掛けではないよね〜。なれなれしいのも嫌だけど、ここまで放っておかれるのも……ちょっと寂しかった。このバランス難しいけどね。
調査員B:若者のカウンター恐怖症は、話しかけなきゃいいという問題ではないです。せっかくの豪華なタッチアップ台があるのに。そこに気持ちよく導いてこそ、BAなのではないでしょうか。たまたま私が行った時がそうだったかもしれないので、次回はそうじゃないことを願って。今後に期待です!
調査員A:40代女性。大学卒業後、編集プロダクション〜出版社で編集職を担当。ビューティ担当になってから20年近く。プチプラからラグジュアリーまで化粧品をこよなく愛すがゆえに、厳しい目も持つ。趣味は、年3回は行く海外旅行
調査員B:20代女性。大学卒業後、メディア、ビューティ関連企業で働く。海外コスメ好きで国内外のECサイトで良く買い物をする。趣味はインスタグラム、ユーチューブでコスメ情報を探すこと