2月4日にイタリアで開幕したファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」に、イタリアを中心とした欧州企業477社が出展して2021年春夏向けのテキスタイルやファッション資材を提案している。
同見本市はかねてからサステナビリティ追求に取り組んでおり、トレンド提案はもちろん、サステナブル素材を集めたエリアを設けて来場者にサステナビリティの重要性を訴えてきた。
今回のトレンドエリアでは、これまで別々に提案していたトレンド素材とサステナブル素材を同じキーワードのもとに並べ、また、今回は初めて製品サンプルを並べたことで、見応えのある展示になった。
「サステナビリティとクリエイティビティーは両立できる」
「クリエイションはサステナブルでなくてはならない。ようやく、両方を兼ね備える素材の数がトレンドのみを表現した素材の数を大きく上回った」とステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)=アーティスティック・ディレクターは満足げに語る。
同見本市がサステナビリティ重視に舵を切った当初のタイミングでは、トレンドエリアを作る際に「メーカーがサステナビリティをフォローしきれず400~500アイテム程度しかそろわなかった」と振り返り、回を重ねるにつれてサステナブル素材が増えて、今回約1500点のサステナブルでクリエイティブ(トレンドに合ったもの)な素材が集まったという。トレンドを捉えているがサステナビリティを満たしていない素材は500点程度で、「この調子でいくと、近いうちにクリエイティビティーとサステナビリティを両立させた素材で全てをそろえることができるだろう」と続ける。
「Z世代は素材の良さを見分けることができる」
「21年春夏向けではZ世代がターゲット。高級でエクセレントな生地を若者向けの服に使うとしたら――例えば軽いウールでTシャツやスエット、ジーンズを作るような提案だが、そうした発想からトレンドを“カルチャートライブ5.0”とした。彼らは、未来のテクノロジー5.0(情報テクノロジーに続く次のテクノロジー)を洗練された形でファッションに投影すると同時に、行動レベルでは生まれたときから持つトライブ(種族)性に従っていると考えた」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは言う。未来と過去、テクノロジーとクラフト、そして世界のさまざまな文化を結び付けた。
トロピカル・レイヴ・イン・メキシコシティー
「若者のレイブパーティーとメキシコシティーの“死者の日”の祭りからイメージを広げた。蛍光色をキーカラーに、柄は、サイケデリックな柄やナチュラルなものをグラフィカルに表現するイメージ。そこに刺しゅうやクロシェ編みなどでフォークロア感を加えていく」。光沢感とマット感、クラシックな柄にアブストラクトな柄をのせるなどコントラストを利かせた表現がポイントになっている。「環境負荷の低い素材でこの色彩が表現できたのは驚きだった。最も研究されたのは軽量素材の3次元化で、マット織やジャカード織、透明やマルチカラーの基布に異なる編み組織や刺しゅう、ウキ編みで表現されている」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは言う。
インディアン・チル・アウト・イン・ロサンゼルス
「若いサーファーのロサンゼルスでのビーチ生活とネイティブアメリカンをミックスした。彼らはビーガンで、スピリチュアルな部分もある」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは語る。水色やピンクといった透明感のある淡い色にラメやメタリックをアクセントに加えたり刺しゅうなどを施した、快適でリラックス感のあるテキスタイルが多い。柄はストライプやタイダイ染めなどのぼかし柄が多く、デニムはブリーチをかけたものが並んだ。ネイティブアメリカンのモチーフもナチュラルカラーで表現した。
ブリティッシュ・クラビング・イン・パプア
「英国の伝統的なクラブとパプアの伝統をミックスした。クラシックな英国やイタリアの生地にメッシュや鳥の羽根やプリント、異なる色の葉っぱの刺しゅうを加えるイメージだ」。クラシックなウール地にメッシュやスパンコールなどを重ねてグラフィカルな装飾を加えた。柄はチェックのバリエーション、カモフラージュやアニマルといった自然モチーフで、色はフォレストグリーンやアーバングレー、そしてアクセントに赤を加えた。
「Z世代は、ミレニアルズに比べるとブランドからの影響を受けない世代。ブランドの視点が入る前の素材の、段階で選んでもらいたと考えた。Z世代は品質の良い素材を選ぶ目を持っているし、ファストファッションであっても耐久性のある素材を選ぶことができる」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは考える。
「ミラノ・ウニカ」会長のエルコレ・ボット・ポアーラ(Ercole Botto Poala)=レダ(REDA)社長もZ世代について「環境問題に最も敏感な世代であり、地球環境意識を世界に広めた」とし、「『ミラノ・ウニカ』もそうした意識を共有している。今や環境保護は、企業や政治のあらゆるレベルの意思決定において最優先事項とされるべき段階に来ている。持続可能な未来をわれわれの子どもたちに保証するために責任ある行動をとらねばならない」と述べている。