ファッション

レア物スニーカーのリセール店がこんな場所にあるなんて! 「キス」で「コレット」の残り火に遭遇 NYの小売り事情をパトロール

 引き続き、ニューヨークに出張中です。アメリカ経済は現在非常に好調なはずですが、小売り関連のニュースだけ見ていると、米「バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)」の破綻&買収、百貨店「メイシーズ(MACY’S)」の125店閉鎖&2000人削減など、「……景気、全然良くないよね!?」と突っ込みたくなります。ただ、前回紹介したD2Cのように、小売りの中でもグングン存在感を増している分野があることは確か。小売業全体が苦しいのではなく、「バーニーズ」にしろ「メイシーズ」にしろ、変化&進化してこなかった企業がにっちもさっちもいかなくなっていると見た方がよさそうです。そんな視点で、NYのファッション関連の小売店を巡ってみました。

オゴれるものも久しからず? かつての最先端「アンソロポロジー」は今

 前回の記事で紹介した眼鏡D2C「ワ―ビー パーカー(WARBY PARKER)」の店へ行く途中、スペシャリティーストア(いわゆる高級セレクトショップ)の「ジェフリー(JEFFRY)」に寄り道しました。「バーニーズ ニューヨーク」が経営破綻した今、スペシャリティーストアって全般的にどうなんだろう?と思いながらの入店です。平日の昼間というタイミングもよくなかったんでしょうが、客は私以外にほとんどおらず。しかし店員さんは皆陽気で、ほどよく積極的な接客はグッド!陽気なのはアメリカの国民性と言えばそれまでですが、直前にチェルシーマーケットで立ち寄っていた「アンソロポロジー(ANTHROPOLOGY)」は、客はいないしセール品はズッシリ詰まっているし、その上、店員は挨拶もそこそこに作業に没頭しているか同僚とおしゃべりしているかという状況でした。価格帯が全く異なる2店なので、比べるのはナンセンスかもしれませんが。

 アーバンアウトフィッターズの「アンソロポロジー」って、ライフスタイル提案型SPAの先駆けとして、10年前くらいまでは日本の大手小売りもかなり注目していた店だと思います。そう考えると時代の流れって残酷ですね。でも、私が初めてNYで「アンソロポロジー」を見て憧れたころ(今から17年前)と、店頭の編集の仕方が大して変わっていないように感じるので、そりゃあライフスタイル提案が当たり前の時代になったら、埋もれちゃいますよね。などと考えながら直近の四半期決算の数字だけサラっと追ったところ、業績は別に悪くないようで。影響力は弱まりつつも、苦境の底は打っているのかもしれません。

「ストリートウエアに未来はない」って本当? 「キス」は引き続き大人気

 お次はスニーカーヘッズに大人気のストリート系ショップ、「キス(KITH)」のソーホー店をパトロール!ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が昨年末に、「ストリートウエアに未来はない」なんて口にしてストリート界には激震が走りましたが、ひっきりなしに客が入ってくる「キス」を見る限り、私はがぜん未来を感じました。……少なくとも、「アンソロポロジー」と「ジェフリー」よりは未来を感じました。EC全盛時代に世界中からスニーカーヘッズ&私のようなおのぼりさんがこれだけ集まる店って、すごいですね。もちろんヴァージルは、こうした現時点での盛り上がりではなく、もっと大局を見て「未来はない」と語ったんでしょうけど。

 さて、2階奥のスペースに特に人が群がっているので何かなと思ったら、懐かしの「コレット(COLLETE)」がポップアップをしているじゃないですか!「コレット」といえば、17年末に惜しまれつつ閉店したパリの名店ですが、「キス」とストリートメディア「ハイスノバイエティ(HIGHSNOBIETY)」との三者コラボで、フーディやTシャツ、「ケースティファイ(CASETIFY)」のiPhoneケース、iPodsケースなどを売っていましたよ。「コレット」を閉める際、創業者の娘でクリエイティブ・ディレクターだったサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)が「今後は他社のポップアップイベントのディレクションなどを行っていく」と話していましたが、店はなくなってもこうやって魂は受け継がれていくんだな、と胸がアツくなりました。同時に、そりゃこっちの方が固定費かからないし、バズ(話題性)が重要な時代には売り方として効率がいいよね、などと下世話なことを思ったのでした。

「アメリカンイーグル」がスニーカーのリセール店とタッグ 日本にも広がる?

 さて、次に訪れたのは「アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS、以下AEO)」のソーホー店。「AEO」は19年末をもって日本からは全店撤退したので、本国の雰囲気を一応見ておかねば、くらいの軽い気持ちで入店したんですが、店をずんずん奥に進んでいくとそこには衝撃の光景が広がっていました……!店の奥の広大なスペースが、プレミアムなスニーカーやTシャツ類のリセールショップになっていたんです。「AEO」の売り場にもまあまあ客はいましたが、リセールショップにいた客数はそれを遥かに超える量。話には聞いていましたが、アメリカのリセール熱って本当にすごいんですね。

 「この店、一体何なの?」「『AEO』がリセール業態も持っているのか?」など、次々と疑問が浮かび調べたところ、「フットウエアニュース(FOOTWEAR NEWS、以下FN)」(WWDと系列が同じメディアです)に記事が出ていました。それによると、このリセールショップは「AEO」が自前で手掛けているのではなく、ラスベガス発のリセールショップ「アーバン ネセシティーズ(URBAN NECESSITIES、以下UN)」が「AEO」と組み、19年5月に出店したもの。正直、「AEO」って、(そこまでファッションに興味のない)アメリカの一般的な若者が着ているイメージだったので、この2つにシナジーなんてあるのか?と思いましたが、「UN」創業者のジェイシー・ロペス(Jaysse Lopez)は、「『AEO』と話し合いを始めた時、確かに最初は合うのかな?と思ったけど、よくよく考えれば『AEO』はアメリカでもっともジーンズを売っている企業の一つ(だから、スニーカーと親和性はある)。『UN』の店頭に来る客をよく観察してみたら、10人に4人は『AEO』の商品を着ていたんだよね」と、「FN」に語っています。ちなみにこの「UN」、創業は14年9月で、18年の年間売上高は2000万ドルだとか。

 「FN」によれば、「AEO」が店内でリセール品を売ることには批判もあるようです(リセール品を売ることで、「AEO」が「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」といったブランド名を“利用”することは許されるのか、といった内容などです)。こうした批判が来ることも含め、「AEO」にとって「UN」とのタッグはなかなか挑戦的な判断だったんじゃないでしょうか。「小売りはもはや(既存の手法が)ブッ壊れているから、客の来店意欲を高める策を模索しないといけないんだよ」とロペスのインタビューは続くんですが、まさにその通りで、「AEO」は批判を恐れず模索しているんだな、と。模索せずやり過ごすと、「アンソロポロジー」「バーニーズ」「メイシーズ」のように取り残されるんだな、と。

 日本で「AEO」と「UN」の取り組みに近い動きだと、ワールドが18 年に、ブランド古着のリセールショップ「ラグタグ(RAGTAG)」の運営会社を買収しています。そのうちワールドが運営する「タケオ キクチ(TAKEO KIKUCHI)」の原宿路面店などに、「ラグタグ」が併設される時代が来るのかも?

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