新型コロナウイルスの影響でストップしていた中国の企業活動が10日に再開され、アパレルの工場も一部で稼働しだした。ただ地域や企業でバラツキがあり、東北部の大連市ではおおむね工場が再開したものの、アパレル製造の集積地である沿岸部の江蘇省、浙江省、広東省などでは地方政府から再開を17日延ばす通達を受けているケースが多いようだ。感染のリスクを抑えながら、経済活動を回復できるのか。まだ予断を許さない状況が続く。
オンワードホールディングスのオーダースーツ事業「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」は、大連の自社工場での生産を10日から再開した。注文から“最短7日”で客の元に届く短納期で人気を集めていた同事業だが、春節休業の延期によって今月初めから納期の先延ばしを余儀なくされていた。「スタッフもほぼ通常どおり出勤しており、正常化に動き出せてひとまずホッとしている」(オンワード広報)。同じくワコールの大連の自社工場も10日から稼働している。
だが、沿岸部では未だ再開されていないアパレル工場が多いようだ。
上海の北の南通市にあるレナウンの協力工場は再開を延期した。「10日に再開する予定だったが、市政府から17日に延期するよう通達があった」(レナウン広報)。ワコールも同様の理由で広東省の自社工場の再開を見送った。
各社の話を総合すると、地方政府はマスクや医薬品など必需品の生産再開にリソースを重点的にあてており、不要不急のアパレル製品は後回しになっているようだ。工場の営業再開には地方政府の審査が必要になる。「深センでは従業員のマスクと消毒液を十分に確保することが工場再開の条件になっている。中国の大手工場は千人以上のスタッフが働く。品不足のマスクや消毒液をそれだけ調達するのは困難だ」(レナウン広報)。
サプライチェーンの川上部分も先行きは不透明だ。
合繊大手の東レは中国の各地に拠点を構えているが、エリアによって状況はさまざまで、工場とオフィスの再開・稼働の確認ができたのは全体の3分の1(10日時点)にすぎないという。「当局の審査の遅れ、日やエリアによって当局の指示が変わったり、物流の乱れやエリアごとに異なる状況などで、現場はかなり混乱している」(東レ広報)。