丸井グループは2月12日、D2Cブランドのエコシステムを支援する会社として新たに設立したD2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)の発表会を開催した。丸井グループの100%子会社で、出資額は1億円、社長には 加藤浩嗣・丸井グループ取締役 常務執行役員が就く。D2Cブランドへの投資・融資やリアル店舗の出店と運営の支援、D2Cブランドのキュレーションサイトの構築などを通じて、D2C業界全体の成長と発展を目指す。
投資に関しては、3年間で30億円程度の出資を予定。丸井グループは2023年3月期までに合計300億円の投資を計画しており、これまでにも、EC構築支援サービスを提供するBASEやオーダースーツのD2Cブランド「ファブリック トウキョウ(FABRIC TOKYO)」、パーソナライズヘアケアブランド「メデュラ(MEDULLA)」を運営するSpartyをはじめ、約130億円の投資を実施してきているが、残りの170億円のうちの一部をD2C関連のスタートアップ企業にフォーカスする。また、一般的なテック企業に比べ初期投資はかからないものの、成長期には運転資金が不足しがちなD2Cブランドの状況に対応するため、機動的な資金提供が可能な融資のメニューを充実させていく予定だ。
また、リアル店舗の出店では、年間2億人が来店する全国のマルイ店舗でのポップアップショップや常設店など、期間や面積に応じた柔軟な出店機会を用意するほか、什器や内装といった売り場作りのノウハウも提供。店舗運営や接客のスキルにおいても、丸井グループの社員の派遣などを通じた支援を行う。キュレーションサイトに関しては、現状は計画段階だが、丸井グループが出資しているD2Cブランドを含む、複数のブランドをキュレーションしたサイトにより、顧客属性の近いブランド同士の相互送客などを計画しているという。
新会社の設立に関して、丸井グループの青井浩・代表取締役社長は「当社では“売らない店舗”として従来の店舗から体験型ストアへの転換を推進するなど、これまでに新たな領域へ参入してきた。この背景には、百貨店や郊外のSC(ショッピングセンター)よりも大きな売り場を持たず、品ぞろえも劣るという丸井グループの特徴がある。そんな中で生き残っていくためには、周りと違うゲームをどのように作り出していくかが重要だった。まだ始めたばかりだが、非常にいい手応えでスタートできたという実感がある」と語る。新会社の今後の業績について加藤社長は「5年後に黒字化を目指す。ただ、新会社の事業単独での拡大を目指しているのではなく、グループ全体の企業価値向上に取り組んでいくつもりだ」と説明する。
発表会の後半では、丸井グループの出資先であるBASEの鶴岡裕太代表やファブリック トウキョウの森雄一郎代表、Spartyの深山陽介代表らを招いてのトークセッションも行われた。新会社の設立について鶴岡代表は「BASEでの出店者を見ていると、モノ作りやマーケティング、リアル店舗の運営ノウハウなどにおいていずれかが欠けているブランドも多い。それをプロが外部からサポートしてくれるのは非常に心強い」と感想を述べる。深山代表は「ウェブベースではPDCAのサイクルが非常に速い一方で、リアル店舗ではウェブと同じようにはいかない。ズレがリアル店舗出店の妨げの一員になっていた。丸井の新会社は、そういった妨げを取り除き、成長の加速を手助けできると思う」と語る。森代表はリアル店舗を通じた顧客体験とブランド価値の向上について話しつつ、「ニッチなファンを持つブランドもたくさんあるが、丸井の支援によってそういったブランドがたくさん生まれてくると世の中はもっと面白くなるのではないか」と期待を見せた。
トークセッションの最後では、丸井グループの青井社長が新会社設立後の今後のビジョンについて話した。「丸井グループだけが大きくなればいいというわけではない。D2Cブランドを支援することで社会が良くなっていくと本気で思っている。リターン目的の単なる投資ではなく、さまざまな面からブランドを支援しようとしているのはそのためだ。大規模なブランドはもちろん、ニッチでも深く刺さるようなブランドをも巻き込んで盛り上げていくことで、楽しい世界を作っていけると考えているし、貢献していきたい」。