※この記事は2019年11月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
ティファニー、おまえもか……
LVMHがティファニーと買収の交渉をしていると報じられた際、「いやいや、交渉を持ちかけるのはLVMHの自由ですが、ティファニー(TIFFANY & CO.)が合意するわけないじゃないですか」と勝手に思っていました。確かにLVMHは強大ですよ。これまでシャネルだってエルメス(HERMES)だってプラダだって買収されるのでは?と噂になったことがありましたよ。
しかしこの度、ティファニー陥落です。182年もの歴史を持つアメリカン・ラグジュアリーブランドとしてインディペンデントにやってきたジュエラー、ティファニーがLVMH傘下に入るって、それはそれなんというか矜持がないじゃないですか!どうするんですか、LVMHをさらに強大にして!
いえ、別にLVMHが嫌いなわけではありませんが、でも本当に一極集中になってしまうと言いますか、市場には多様性と競争が大事だと思うのです。
取締役会とか株主というものは、ちょっと経営がうまくいかない時期があると早く高く売って儲けたいという気持ちになるのでしょうか……。
2011年にイタリアンジュエラーの雄、ブルガリがLVMH傘下に入った際も「おいおい」と思いました。当時CEOだったフランチェスコ・トラーパニ(Francesco Trapani)氏は創業家一族としてブルガリの経営を任されていたわけですが、15年以上CEOを務めた後にLVMHに至るし、本人はLVMHのジュエリー&ウォッチ部門のトップに就くというウルトラCを見せました。本人はもはやブルガリからもLVMHからも離れ、投資会社に移りましたが、ブルガリ自体はその後事業効率が上がったようですし、安定しているように見えます(LVMHはブランドごとの売上高を開示していません)。
ですから、LVMH傘下に入るって、ブランドにとっては良いことだったりしますし、多分相互ウインウインになることでしょう。しかし、ティファニー、おまえもか……。
なんてことを考えながらティファニーの取締役会メンバーをチェックしていたら、なんとトラーパニ氏の名前が……!!そして、ティファニーのアレッサンドロ・ボリオーロ(Alessandro Bogliolo)CEOは1996年から2012年までトラーパニ氏と共にブルガリの経営に携わっていた人物でした……。なんだか、今回の買収の裏側が見えた気がしますね。
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