サンエー・インターナショナルは、30代以上の大人の女性に向けた卸売の新ブランド「スタンブリ―(STUMBLY)」を2020-21年秋冬からスタートする。デザイナーは国内外のメーカーでのキャリアの後、自身のブランド「エルデール(HELDER)」を手掛ける武田信一郎。トラッドやミリタリーなど普遍的な価値を持つアイテムをベースに、モードテイストを加えることで、「大人の女性が今の気分で着たい服」(武田氏)を表現する。
昨今は暖冬で重衣料が売れないと言われる中、初シーズンはコート類が全商品(25型)の半分以上を占める大胆なラインアップ。「消費者のファッション離れや異常気象など業界に逆風が吹く中、われわれも価格や前年比といった数字発想のモノ作りに陥りがちになる。その気分は服を通じてお客さまにも伝わってしまうだろう」と武田氏。「お客さまが周りからほめてもらえて、着ていても気分が上がる服作りに、今一度立ち返ることが大事だ」。
20-21年秋冬は、ミリタリーなどのルーツを踏襲しつつ、シルエットや色使いでコンテンポラリーに昇華したコレクション。武田氏は「日常と仕事着の垣根がなくなりつつなる中で、コンサバでもなく、とんがっても見えない、ほんの少しのモード感を心掛けた」と語る。
ビッグシルエットのPコート(7万4000円)は襟のゴージラインやボタンの位置を下にずらし、重心を低く設定。さらに立体設計の袖によって独特のムードをただよわせた。モーターサイクルコート(7万9000円)は3つの大ぶりなポケットや腰ベルトなど本物志向のディテールを搭載しながら、上品な光沢のある細番手の梳毛生地、鮮やかなカラーでまとめた裏地のパイピングなどで、大人の女性にふさわしい服に落とし込んだ。
トラッドをベースとするのは、大人女性向けアパレルの“空白地帯”を狙うためでもある。「エレガンスとモード感をテーマにした洋服の市場はすでに激戦区。当社にも『アドーア(ADORE)』『ル フィル(LE PHIL)』といったブランドが存在する。われわれは、より普遍的な価値に魅力を感じる女性の取り込みに焦点を当てていきたい」。
実店舗については、「(店の)スペースを埋める商品や見せ筋など、クリエイションのスタンスがぶれる原因になる」ため、出店しないという。大手のセレクトショップや地方の個店などを中心に販路を広げ、中期的には海外展開も視野に入れる。5年後の売上高目標は卸売額ベースで3億円を目指す。