ネット発のソックスブランド「ソックスソックス(S〇XSOCKS)」をご存知だろうか? 2018年設立の同ブランドは、商品名や商品説明欄にはギャルのような言葉遣いや絵文字を多用するなど、他ブランドにはない異色の世界観を構築している。そんな同ブランドは、かねてから「ヴァンキッシュ(VANQUISH)」や「#FR2」を運営するせーのの石川涼社長に憧れを抱いており、以前「WWDJAPAN.com」で掲載したインタビュー記事で「#FR2」とのコラボレーションを熱望したところ、なんと本当にコラボが実現。2月24日まで東京・原宿の「#FR2ギャラリー」で「ソックスソックス」とのコラボポップアップを開催中だ。そこで今回、石川社長と「ソックスソックス」を手掛ける明石泰士氏にインタビュー。“業界の異端児”とも言える2人の考えから、ネット時代のアパレル処世術を探った。
WWD:コラボレーションが実現した経緯は?
石川涼せーの社長(以下、石川):ツイッターで僕のフォロワーから「この記事で石川さんについて書かれてますよ」ってDMが来たんだよね。それでコラボを決めた。
WWD:「ソックスソックス」とならコラボしてもいいと思った理由は?
石川:躊躇してない感じが良かった。個人的には今アパレル業界のほとんどの人たちがオーバーコンプライアンスになり、ダメな方向に向かっているなと感じていて、僕らはその状況を突っぱねるような形で進んできた。「ソックスソックス」の明石くんたちのような若い世代でも、突っぱねている人たちがいるんだと思って。もういないかと思っていたから。
明石泰士(以下、明石):ありがとうございます。確かに、僕が「ソックスソックス」を始めたのは、周囲の「かっこいい服を着て、かっこつけているのが良い」という環境をぶっ壊そうと思ったからでした。最近はそういった“逆張り精神”的なブランドが少なくなってきたようにも感じるんですが、石川さんはどのように思われているんですか?
石川:なんでみんな同じようなやり方をするんだろう、とは感じるね。どのニュースを見ていても、大体みんな同じことを言っている。今だとサステナブルとか、エシカルとかが主流だけど、僕から見たら「はぁ?」と思ってしまう。時代的にそういう風潮だとしても、同じ方向に進んでしまったら大企業が勝つに決まってる。自分たちの個性を探して磨きべきだし、周りと違うからみんなが欲しくなって結果的に売れるはず。
WWD:アパレルでは現在、暖冬や増税などの影響で不調な企業が多いが、2人の現状はどうか?
石川:暖冬なんか全然関係ない。ハッキリ言って、うちは前年からの伸びはヤバいし、「#FR2」では一日で7000万円以上売ったコラボもある。その前のコラボも4000万円分の在庫が100%プロパーで消化している。結局、お客さんが欲しがっているものを提供できているかが一番大事なんだよね。「暖冬とかで売れない」と言っている企業は、単にお客さんが欲しいと思うものが無いってだけ。
明石:僕らは石川さんとは違って数字とかを語れる規模にはないですのですが、そろそろ拡大していかないとなと考えています。ただ、自分たちの個性とビジネスのバランスのとり方が難しいとも感じています。石川さんはどうやってバランスを取っていますか?
石川:難しいよね。ただ、とにかくファンを増やし続けることが一番大切。あとは現時点でセールをしなければ売れないようなブランドは今後、なくなっていくと思う。そう考えると、常に買えない状況を作ることも必要になってくる。でも、単に商品数を絞ればいいという話ではなく、120人のファンがいたら100枚のアイテムを売る。次はファンを220人に増やして200枚を売ってと、徐々にパイを増やしていく。どの道一段飛ばしはできないから、今までやったことのない店に挑戦するとか、アイテムが売れて着たらどうすべきかとか、段階的に挑戦する方がいいと思う。
全ては環境 今は「ネットじゃない」
WWD:ファンを増やし続けるために、石川社長が意識していることは?
石川:今がどういう環境か、そのもとで消費者は何を欲しがっているのか、どういうモノの買い方をしているのかを常に分析することかな。例えばインスタが盛り上がってきた時には、インスタの中の人たちが何を求めているのかをずっと探してきた。離れた人ともコミュニケーションが日常的に取れる時代に、そのコミュニケーションの中心となるにはどうしたらいいかを考えた。今、僕らはそうなってきているし、今後は世界に向けてもっと拡大させていきたいと思っている。
明石:コミュニケーションは僕も重視しています。ポップアップ開催中の接客の際もそうだし、商品のデザインでもお客さんからの“突っ込み”を想定していたり。インスタも盛り上がって大分経っていますが、今の環境って石川さんはどう思われてるんですか?
石川:言っていい(笑)?はっきり言って、今はネットじゃない。みんながネットで何でも買える時代で、全ての情報も日常的にアクセスできるようになってしまったからこそ、本当に欲しいモノはネット上にはない。つまり、ネットで買えないモノが重要になってくる。今、「#FR2」は各国の観光地のど真ん中に店舗を出して、そこでしか買えないモノをお土産屋のパッケージで売っているんだけど、全店舗で当たっている。僕らがやっているビジネスは、観光地というお客さんがいる場所で、ある程度の認知があるモノを「そこでしか買えません」と言って売り切っている。あとは転売なりなんなりで、コンシューマーが勝手にネット上のインフラを使って売ってくれる。僕としては、このビジネスで世界に行けると思う。決して転売とかを推奨しているわけではなく、今の環境は誰にも止められない。だったら自分たちはどうしていくか、と考えただけ。
WWD:“土産屋”のさらに先を、石川社長はどう考えている?
石川:教えられないなぁ(笑)。ただ、今は消費行動の目的に服が上がらなくなってきている。今僕らがやっているのは、例えば京都に行って「何か京都っぽいモノを買って帰ろう」と思った時に、その中に「#FR2」が上がってくるかどうか、というところなんだよね。単に服というよりは、記念品に近いし、ステータスになるモノでもある。現時点では、そこしかセールと無縁な領域は無いと思う。
明石:でも、競合も“土産屋”ビジネスに参入してきた際には、また別のことをしなければならなくなりますよね?
石川:そうだね。ただ、できないと思う。今から参入したところで場所が取れない。僕らが場所を取れたのは参入が早かった上、各地の地元企業と組ませてもらっているから。今年は宮島とかハワイとかに出店する予定だね。