ファッション

レジなしコンビニ「アマゾン ゴー」をNYで体験 便利だけど品ぞろえは改善点あり?

 2020-21年秋冬のニューヨーク・コレクション取材でNYに来ています。「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」の記者会見を前に、オフィス街のブライアントパーク付近をプラプラしていたら、「アマゾン ゴー(AMAZON GO)」を発見!ご存知の方も多いと思いますが、ECのアマゾンが開発したレジなしのコンビニ業態です。NY出張中に行ってみたい店の一つだったので、一体どんなものか早速パトロールしてきました。

 入店のために必要なのは、「アマゾン ゴー」のアプリ。アプリをダウンロードした上で、米国のアマゾンアカウント(アマゾン ジャパンのアカウントではダメな模様)とのヒモ付けを求められます。私はアプリも米国アマゾンのアカウントも持っていなかったので、その場でいそいそとダウンロード&作成しました。米国アマゾンのアカウント上で決済用のカード登録も済ませたら、準備オッケー!アプリ上で“KEY”という部分を押すとQRコードが出てくるので、それを自動改札機のようなゲートにかざせば商品が陳列してあるエリアに入ることができます。

 品ぞろえはサンドイッチやサラダ、ヨーグルト、カットフルーツ、ポテトチップスやグミなどのお菓子類、自分で注ぐタイプの「スターバックス(STARBUCKS)」のコーヒー、ペットボトル飲料など。私は日本のコンビニスイーツ的なミニチーズケーキやブラウニーみたいなものが食べたかったのですが、そういうものは残念ながら置いてなく。“ストロベリーバナナパフェ”なる商品が品切れになっていたので、「えー多分私が食べたいものに一番近そうな商品はコレな気がするのに……」と思いながら、気を取り直してあんずのヨーグルトを手に取りました。店内をグルっと一周して(一般的な日本のコンビニより断然狭い)、やはり気が変わったのであんずヨーグルトを棚に戻し、リュバーブ味のヨーグルトを手にゲートを出ました。

 出る時は自動でゲートが開きます。会計をする必要がないと頭では分かってはいるものの、なんだかちょっと万引きしているような気分。出た直後、「ああやっぱり夕方お腹が空いた時用にチョコレートを買っておいてもよかったかも」と思うも、ヨーグルトを持ったままもう一度入店したら、トラッキング用カメラが混乱して(そもそも「アマゾン ゴー」は、天井におびただしい数が仕掛けられたAI搭載のカメラが客をトラッキングし、何を手に取ったかを追う仕組みだそう)代金を2回請求されやしないかと思い、やめておきました。というのも、中国の無人コンビニ事情に詳しい方が以前、「中国の無人コンビニでは、買ってないものが買ったことになっている事態が頻発している」と話していたんですよね。

 ゲートを出たところにイートインスペースがあったので早速ヨーグルトを食べました。ナイフやフォーク、持ち帰り用紙袋、電子レンジなども設置してあるので、近隣のオフィスに勤める人には便利そう。実際、マンハッタンの中でもオフィス街のミッドタウン中心に出店しているので、ビジネスパーソンの朝食&ランチ需要がメインターゲットのようです。アプリによれば、現状の店舗数はニューヨークに8店、アマゾン本社のあるシアトルに5店、シカゴに7店、サンフランシスコに5店。オープン時間は店や曜日によって違いますが、私が行った店は平日は6時~22時でした。

 ヨーグルトを食べていたら、アプリと登録eメール宛てにレシートが届きました。一度手に取り棚に戻したあんずヨーグルトのお代は請求されておらず、ひと安心。万一買っていない商品が買ったことになっていても、アプリのレシートから払い戻し申請ができるようです。しかしこの手法だと、買ったものを「買っていない」と言い張って払い戻し請求してくる悪い輩はいないんだろうかと思ったり。悪質な場合には、トラッキングデータを開示して戦うんだろうか。そのへんは謎です。

アマゾン傘下の「ホールフーズ」がレジなしだったらいいのに!

 以上が私の初「アマゾン ゴー」体験でしたが、会計なしですぐ出られるのは確かにストレスフリー!しかし、24時間365日ほしいものが手に入る日本のコンビニになれている身としては、もうちょっと品ぞろえを頑張ってほしいなと思いました。買いたかった“ストロベリーバナナパフェ”なるものが品切れだっただけでなく、結構品切れの商品が多かったんですよ。一時期日本にもあったパン屋「ドミニクアンセルベーカリー(DOMINIQUE ANSEL BAKERY)」のクイニーアマンや、こちらも有名店「エッサ ベーグル(ESS-A-BAGEL)」のベーグル、「マグノリアベーカリー(MAGNOLIA BAKERY)」のカップケーキなども扱っているようなんですが、これら“朝食想定”の商品は15時半の時点では全て品切れ。棚には品切れを知らせる茶色い札がいくつも立っていました。

 しかし、24時間いつでもほしいものが買えて当然という、日本人に根付いた(少なくとも私には根付いている)マインドセットこそが、コンビニの大量廃棄問題の元凶だとも思います。「朝食用商品は朝食時にしか売らないし、売り切れたら終わり。他にも食べ物は売っているんだから、お腹が空いているなら他の商品を買いなさい。それが嫌なら明朝まで我慢なさい。それがサステナブルなコンビニ運営というものです!」などといった殊勝なことを「アマゾン ゴー」が考えているのか、それとも単に日本のコンビニ並みのサプライチェーンがまだ構築できていないだけなのかは分かりませんが(後者だと思うけど)、アマゾンがやっている以上、より便利に、よりユーザーにとって使いやすく、そしてよりアマゾンが儲かるようにとサプライチェーンを猛烈に整えてくる日も近いんじゃないでしょうか。

 アマゾンといえば、米国のスーパー「ホールフーズマーケット(WHOLE FOODS MARKET、以下ホールフーズ)」を17年に傘下に収めています。「ホールフーズ」といえば、生鮮食品にお惣菜、生活雑貨、おみやげ、シャレたナチュラルコスメまでなんでもそろう最強のお買い物スポットですが、どこの店舗にいつ行ってもレジ待ちは長蛇の列。「ホールフーズ」にこそ「アマゾン ゴー」のレジなしシステムがあればいいのに……!そうなったら、あの豊富な品ぞろえでレジ待ちのイライラもなく、最強の店ができあがるのに……!!しかし、「ホールフーズ」の広大な店内にくまなくトラッキング用カメラを設置するのは、莫大な設備投資がかかりそうです。

 ちなみに、初「アマゾン ゴー」体験から数時間後、ミッドタウンで別の「アマゾン ゴー」を見つけたので再度入店してみました。店によって品ぞろえは少しずつ違うようで、こちらには私が求めていたミニチーズケーキなどのコンビニスイーツもあり、無事購入することができました。そうそう、この店にはパック入り卵も置いてありましたよ!さらに翌日、再度ブライアントパークそばの「アマゾン ゴー」に立ち寄ったところ、前日とほぼ変わらない時刻だったのに「ドミニクアンセル」のクイニーアマンや「エッサベーグル」のベーグルが結構置いてありました。……私が前日感じた品ぞろえに対する憤りを早くもかぎ取ったんだろうか(そんなわけない)。というわけで、品ぞろえに関してはいまいち法則性が見えません。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

疾走するアシックス 5年間で売上高1.8倍の理由

「WWDJAPAN」11月4日号は、アシックスを特集します。2024年度の売上高はコロナ前の19年度と比べて約1.8倍の見通し。時価総額も2兆円を突破して、まさに疾走という言葉がぴったりの好業績です。売上高の8割以上を海外で稼ぐグローバル企業の同社は、主力であるランニングシューズに加えて、近年はファッションスニーカーの「オニツカタイガー」、“ゲルカヤノ14”が爆発的ヒットを記録したスポーツスタイル…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。