中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)は、新型コロナウイルスの影響で2020年1~3月期(第4四半期)の売上高が予想を下回ることを示唆した。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国政府は1月末までだった春節(旧正月)の連休を2月3日まで延長したが、縫製を含めた製造工場は2月9日までの休業が通達されていた。現在は一部の企業活動が再開されているが、資材調達や従業員の確保がネックとなり、操業の正常化はまだ遠い状態だ。
マギー・ウー(Maggie Wu)最高財務責任者は、「商品やサービスに対する需要はあるが、中国国内のオフィスや工場、店舗が休業しているため通常のように生産することは難しい。最終的にどの程度の影響となるのか現段階では分からないが、2月に入ってからの12日間ほどを見ると、成長率にマイナスの影響があることは避けられないだろう。特に多くのメーカーが出店する国内のマーケットプレイスが打撃を受けている。しかし現在の状況は一時的なものであり、長期的には中国市場と当社が成長軌道にあることを確信している」と語った。
アリババ・グループ傘下のスマート物流プラットフォーム会社、ツァイニャオ(CAINIAO)でも人手が不足しており、物流サービスは通常の20%以下の稼働率となっている。しかし同社はAI(人工知能)やロボットを活用した有料サービスも行っているため、影響は限定的だ。また不要不急の外出を避けている人が多いことから、食品や日用品なども含めてオンラインで購入するケースが増加しており、プラスの影響となっている。在宅勤務を許可する企業も多いため、アリババが開発した社内業務効率化アプリ「ディングトーク(DingTalk)」の導入率も大幅にアップしているという。なおアリババは出店企業への支援策として、全プラットフォームサービスの20年上半期分の料金の減免、倉庫の使用料や配送料の値下げ、低金利ローンの提供などを打ち出している。
ダニエル・チャン(Daniel Zhang)=エグゼクティブ・チェアマン兼最高経営責任者は、「アパレルや家電業界はサプライチェーンが通常通りに機能していないことによる困難に加えて、新型肺炎の猛威による消費意欲の落ち込みにも直面している。しかし事態が収束すれば、長らく自宅にいざるを得ない状況だった人々の“外出して買い物をしたい”という強い意欲が働き、需要が回復すると確信している」と述べた。
19年10~12月期(第3四半期)におけるアリババの売上高は前年同期比37.6%増の1614億元(約2兆4210億円)と増収だった。これは主に中国国内での小売事業とクラウドコンピューティング事業がけん引しており、20年1月の売り上げも新型コロナウイルスの影響が出るまでは引き続き好調だった。