近年、大人の女性のためのブランドが増えています。ユナイテッドアローズ(以下、UA)が2019年秋冬からスタートしたブランド「ロエフ(LOEFF)」もその一つ。現在、UA六本木店と原宿店の社内のグループ店と、エストネーション(ESTNATION)、ジャーナルスタンダード レサージュ(JOURNAL STANDARD L'ESSAGE)などに卸しており、4月下旬には初の直営店が六本木の東京ミッドタウンにオープンするそうです。
これまでエイチ ビューティ&ユース(H BEAUTY&YOUTH)や「スティーブン アラン(STEVEN ALAN)」のデザインを手掛けてきた鈴木里香「ロエフ」ディレクター兼デザイナーが生み出す等身大のコレクションは、“40~50代になっても着続けたい服作り”をベースにしていて、ワークウエアから着想したトラディショナルで男前なスタイルに定評があり、20年春夏からはメンズもスタートしています。
多くのブランドは春夏と秋冬の年2回、展示会を開催することが多いのですが、近年は夏が長くなり、ともすると10月でもまだ暑く、もはや“亜熱帯化”している日本において、年間でどのようなMDを組むのかはファッション業界の課題になっています。そこで“樹海と乗馬”をテーマにした20-21年秋冬シーズンの展示会で鈴木ディレクター兼デザイナーにそのことについて尋ねると、「自分自身、昨年は暖冬で一年中半袖やTシャツで過ごしていました。だからシーズンの立ち上がりはTシャツを提案したんです」とのこと。Tシャツにジョッパーズ風のサイドが膨らんだパンツを合わせ、ストールを肩にかけたスタイルを提案していました。
Tシャツは大人になると似合わなくなるとして避ける人も増えてきますが、鈴木ディレクターがさまざまなTシャツを試してたどり着いたというそれは、少し厚地の生地で透けず、程よい襟の大きさとフィット感で上品な印象です。それにジュエラー「アキオ モリ(AKIO MORI)」に別注したシルバーのネックレスを2連にして合わせ、“大人感”をさりげなく表現しています。ストールで温度調整ができるので、シーズンの立ち上がりはこのくらいの軽装でもよさそうですね。ほかにも、さらっとした素材で快適だけど、秋らしい落ち着いたアースカラーのワンピースやトップス、定番の綿シャツ、デニムなどが並んでいます。
シーズン中盤になると厚手のコートの代わりにポンチョを提案。「コート風にもストールにもなるポンチョは気候に合わせて着脱しやすい」とのこと。パールのネックレスや漆塗りのゴールドのアクセサリーを加えることで、重たいカラーになりがちな秋冬のスタイルに華やかさをプラスし、メリハリが出ますね。単なるカジュアルではない、大人のカッコよさがプラスされます。
さらには「フラテッリ ジャコメッティ(F.LLI GIACOMETTI)」のロングブーツやフラットなレザーシューズ、ベストやハーフパンツを合わせた“乗馬スタイル”も今シーズンのテーマ。「“樹海や乗馬”がイメージソースですが、実際には公園や森にいても馴染むような服、そして自分が心地良いけれど人に会いたくなる“きちんとした服を”意識しました」と鈴木ディレクター。ほかにもリサイクルポリエステルのパンツや再生カシミヤで作ったニットなどのサステナブルなアイテムや、得意とする大人のワークウエアもありました。長い夏を乗り切る大人のスタイルとして参考になりそうです。