「アッシュ(ASH)」を中心に美容室チェーンを300店舗以上展開するアルテ サロン ホールディングスは2月14日、同社初となるユニセックスのヘアケア&スキンケアブランド「エニック(ENNIC)」を発売した。まずは同社が展開する全国の美容室各店舗で取り扱う。ここでは、吉原直樹アルテ サロン ホールディングス会長に、同ブランドの開発意図や製品の特徴、今後の展開を聞いた。
WWD:「エニック」の特徴は?
吉原直樹(以下、吉原):「エニック」は“大地に還る”をコンセプトにした美容室発のコスメです。原料の一つ一つを選び抜き、肌や髪に必要のない成分や大地に還らない成分は可能な限り配合していません。界面活性剤は、天然成分による発酵の力で丁寧に手作りしている“そほろはす”(高い生分解性を持つ界面活性剤)を採用し、大人から赤ちゃんまで使えるえるコスメになっています。ブランド名の由来は、「en(=円、縁)」と「nic(=オーガニックの一部)」を掛け合わせた造語で、人と人、人と地球環境をつなぎサステナブルな社会の実現への貢献を目指す姿勢を表現しているんです。
WWD:オーガニックということか?
吉原:よくそう聞かれますが、日本ではオーガニックが“ファッション”になってしまっている。だからオーガニックにはこだわっていません。それよりも私たちがこだわったのは“自然に還る製品”、つまり超ナチュラルな製品です。“自然に優しいものは自分たちにも優しいはず”をモットーに製品作りを進め、それが結果としてオーガニックに結びついた。そういう意味では深い部分で真のオーガニックだと思います。最近は“売れるから”という理由でオーガニックありきで製品を作るメーカーも見受けられますが、「エニック」は哲学が先にある。ニワトリが先か卵が先か、という話なんですが、違いはあります。
WWD:サステナブルは意識した?
吉原:美容室はケミカルの力を借りてお客さまの髪を美しくする施術をしていて、ケミカルを完全に否定することはできません。それならば持続可能な社会に貢献しなければいけない、という思いはありました。「エニック」で採用した界面活性剤“そほろはす”はインドで生産されている、ヨーロッパをはじめ世界で注目されている次世代の界面活性剤。植物油を原料に、化学合成ではなく酵母を使った発酵プロセスにより作られるため、高い生分解性を有しています。生産者はインドで製造しており、積極的に貧困層を雇用して技術を伝授し、雇用のないところに雇用を生み出しているなど、そこまで考えて採用したものなんです。
WWD:アイテムのラインアップは?
吉原:ヘアケアライン4アイテム、スキンケアライン3アイテムの計7品です。ヘアケアラインでは、天然洗浄成分“そほろはす”やシルク由来洗浄成分など、天然由来成分にこだわったアミノ酸系シャンプー「シャンプーLB」、天然由来コンディショニング成分が潤いを与えるノンシリコンの「トリートメントLB」などを展開しています。スキンケアラインでは、厳選した7種の精油を配合したダブル洗顔不要の「ホットクレンジングゲル」、8種のオーガニック植物エキス(保湿成分)を配合した「トリートメント ローション」などをそろえています。
WWD:アルテ サロン ホールディングスにとっては初となるスキンケアを含んだユニセックスのプライベートブランド(PB)となるが、そうしたブランドにした理由は?
吉原:美容室での店販の基本は、“(スタッフが)自分で使って良いモノをお客さまに伝える”ということです。そう考えると、スキンケアもあるのが自然だし、男性のスタッフやお客さまも多いので、メンズでも使えるユニセックスであるのが自然。ヘアケアの方が売れるという見解もありますが、そうした考えから、美容室のPBでは単発で終わってしまうブランドが多い。「エニック」は瞬発的に売ろうという気はなく、3年、5年、10年と少しずつ広がり、お客さまに長く使ってもらいたいと考えています。
WWD:「エニック」の開発には、美容室の店販品の流通に対するメッセージも込められていると聞いたが。
吉原:昔は美容室で売っている商品は、施術で使っている高い品質の商品が、他には流通していないことに魅力があったが、今は美容室で売っている商品が、インターネットや安売りの量販店でも買える時代。しかも、へたをすると1~2割安い。メーカーがいくら管理してもイタチごっこで、止めても止まらない。そのこと自体を批判する気はないのですが、私たちには技術をサポートする製品が必ず必要で、“自分たちが本当に自信とプライドを持って取り扱える商品は何か?”を突き詰めると、最後は“自分で作るしかない”というところに行き着く。美容室が自分たちで作って自分たちの店で売れば、不正流通はほぼ防げます。今後は美容室以外でも、百貨店やセレクトショップなど、“そこに置いてあることで美容師もプライドを持てるショップ”での販売は検討していきたいと考えています。